T君の教授昇進パーティに招かれた
家で血圧を測ると高くないのに、病院で白衣を着た医者の前に出ると、緊張して高くなる人がいる。これを「白衣高血圧」という。
白衣には、それほどの威力があるのだ。
医者の白衣には、警察官の制服制帽、腰の拳銃、坊さんの法衣と同じぐらいの神通力があるのだろう。
坊さんだって、頭がツルツルで立派な袈裟を着ていれば、たいていの人は坊さんに見える。新聞配達や電気工事の人には見えないものだ。
駅のホームで案内をする駅員さんは、駅員の制服、制帽を着用しているから、駅員と思われる。
もし、家にいるときのようにステテコ姿だと誰も駅員とは気づかないだろう。
どんな職業かは外見で判断されるのだ。
私が家で白衣を着ないのは、家にいる時ぐらいは医者であることを忘れたいためだ。
家でも白衣を着ていれば、猫は私に体調不良を訴えるだろう。
しかし、私に猫の病気はわからない。
そういう時はすぐ、白衣を着た近所の獣医さんに連れて行くことにしている。
作品名:T君の教授昇進パーティに招かれた 作家名:ヤブ田玄白