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田中よしみ
田中よしみ
novelistID. 69379
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ウラバンナ(朱夏紀ー2)

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「柊が娘さんを連れて実家に戻ってからは、再婚話も何度かありましたし、言い寄る人もいました……。 だけど柊は実家で孤閨を守るかのようにひっそりと暮らしていました……。だから柊には心に決めた人がいると思っていましたが……」
ママはその想い人がいつまでも現れないので、やきもきしていたとも言った。
ママの話しを聞きながら、池澤捷一が正月明けの電話で話していた人物が、秋津柊であることは間違いなかった。彼はその頃から柊との再会を企てていたが、その動機は私にも依然として分からなかった。
「私が柊に連絡すれば、ここに来る手はずになっています……。この白薔薇の前でお二人がキチンと向き合ってもらえれば、私も肩の荷が下りますので……」
ママは機が熟したと思ったのか、秋津柊に早速電話した。
「柊は一時間後には此処に来ますが、私の役割はここまでです。後は二人でよく話し合って下さい」
ママは意外にもあっさりと遺言執行人の終結宣言をすると店を出て行った。

秋津柊は何不自由のない家庭で育ち、女としての魅力も生まれながらにして手に入れていた。青春時代はカトレヤとして崇められ、卓球人生も常に中心的選手として活躍していた。
その順風満帆の人生も矢納孝夫とのすれ違いによって深い傷を負い転流が起きていた。
吉川弘文との奇妙な同居生活は柊の出自の痛みを保護するシェルターだと分かり吉川との同居生活を解消していた。
北九州の姉の元で再出発する前に、矢納孝夫に逢って純潔を捧げていた。この時に新しい命が授かることを密かに願っていたが、まさか身勝手な願いが叶うとは思いもしなかった。姉は矢納孝夫に連絡するように言ったが、柊はそれを拒否してシングルマザーの道を選択していた。ただ、吉川の子供として認知してもらうことにしたが。吉川もそれを快く引き受けてくれた。
柊の転流は、矢納孝夫が十八歳の時に再会の約束を破ったことから始まっていた。彼が何よりも後悔していたのは、彼女が警急の時に会いに来たのに手を差し伸べなかったことである。
その最後の夜はカンテラの女将の企みもあって、ホテルで二人きりの時間を過ごすことができた。その時の愛の結晶が柊の娘だったが、彼はその出生の秘密を知る由もなかった。