LETTER for arts of letters
すぐに繋がれる世の中だからこそ、なのかもしれない。
言葉を選び、事象を整理し、文字をひとつひとつ連ねていく。
正しく伝わるように、できれば、あなたの目じりや口元に、
ほんの少しでもあたたかな微笑みが生まれますように。そんな願いを込めて。
手紙を書く前も、相手に贈ったその後も、途切れない時間が好きだ。
目に映るあのことも、このことも、伝えたくなるもどかしい気持ち。
どんなふうに読んでくれたのか、とそわそわする気持ち。
そして、「当てのない約束」のように、
存在しないかもしれない未来の返信を、心の私書箱でそっと待つ時間。
相手のためだけにあつらえた特別な住所があるだけで、
不思議なことに、見るものは彩りにあふれる。
「伝えたい誰か」がいるだけで、
世の中の全ての事象が、自分とその周りをつなぐメッセージになり得る。
そんな「幸福の秘密」に相手も気づいてくれたら嬉しい。
そして、「伝えたい誰か」として相手の心に私だけの住所があるとしたら(それがほんなわずかな隙間でも)、それはもうこれ以上望むことはない繋がりなのだろう。
新緑がまぶしい季節になって、たくさんの世界が微笑みかける。
今、たくさんの言葉が私の心に溢れているように、
誰かの心の中にあるかもしれない私だけの場所にも、光が降り注いでいてくれたら嬉しい。
そんな気持ちを胸に、今日、初夏の空を見上げるのだ。
作品名:LETTER for arts of letters 作家名:南山あおい