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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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 さっきナースステーションを覗いてみたが、あの美人のナースは今日もいなかった。
あの時の、「今度お手伝いしますね」は何だったのか?

 あれから二週間たつが、彼女の身に何か重大なことが起こったのかもしれない。
もしかすると、ご主人がオミクロンに感染して、彼女は濃厚接触者として自宅待機になっているのかもしれない。いや、単に忘れてしまった可能性もある。
 
 今日、母が発した言葉は3種類だった。
「オイシイ」「今朝は寒かった」「皆、元気でいいねえ」
この3種類を、プリンを食べながら、ゆっくりと繰り返した。それ以外の言葉はなかった。

 私はナースステーションに行き、母のカルテを見せてもらって、特別な変化がないのを確かめて、帰り支度をした。

「また来るね」と言って帰ろうとすると、母は言った。
「センセイ、センセイのお住まいはどちらですか?」
「〇〇ですけど」と答えると、
「センセイはいつも、早くから来ていただいてご苦労様です。どうぞお元気で」と、とてもまともなあいさつをした。ただし、私が自分の息子であることは、すっかり忘れてしまっている。