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ヤブ田玄白
ヤブ田玄白
novelistID. 32390
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「オオカミ婆ちゃん」なのか

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人間ドックはめでたい




 電車に乗って人間ドックの診療に行った。空いた電車に乗って、自然を眺めるのはなかなかいいものだ。今日は割に暖かったので、気分がよかった。

 人間ドックは毎年1回受ける人が多いので、自然に顔なじみになることもある。

 高橋正美さん(仮名)という50代の人だった。名前が男か女か紛らわしいが女性である。元気のいい人だった。
血液検査のデータをパソコンの画面で見た。

 〈オッ、凄い!γGTPも中性脂肪も尿酸もあんなに高かったのに、正常になってる!〉

「高橋さんですね、去年はかなり異常が目立ちましたが、今年は素晴らしいですね。どうしました?」
「エエ、わたし禁酒したの。こんなに良くなるのね」
「えらいですね。禁酒ってなかなかできないですけど、よくやりましたね」
私は思う存分ほめたたえた。

 しばらくして彼女は言った。
「1年止めてこんなに良くなるなら、また1年飲んでそれからまた止めればいいのね」
「いや、それは止した方がいいですよ。せっかくよくなったんだから」
「そうかしら、少しなら飲んでもいいんでしょ?」彼女は未練たっぷりに言う。

「それがダメなんですよ。ちょっとだけで止められればいいけど、そうはいかないでしょ。だから、禁酒は続けましょう」
「センセイ、ノンアルならいいでしょ?」
「エエ、ノンアルコールならいいでしょう。高橋さん、これでだいぶ寿命が延びましたね。おめでとう」
「そうですか、お祝いに一杯飲みたいところだけど、我慢してお茶けにしておくわ」
(注:昨年、彼女は毎日、ビールを5-6本飲んでいたが、その時のデータはγGTP 390、中性脂肪 458、尿酸 8,2だった。本日のデータはγGTP 28、中性脂肪 84、尿酸 6.3 まるで別人だった。顔色も昨年はちょっと黒ずんで痩せていたが、今日は艶がよく体重も増えたようである)