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ヤマト航海日誌7

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2022.2.7 あなたの頭にローラー掛けて



1984年の〈グリコ・森永事件〉をあなたはご存知だろうか。このとき警察は、〈ローラー作戦〉というものを行った。何千人もの警官を使って今日は大阪府○○市、今日は兵庫県××市、今日は京都府□□市といった具合に市民が住むすべての家を個別訪問させたのだ。巨額の費用と警察の威信を懸けた捜査だったが成果はゼロ。逆に犯人らから、

《ローラーさくせん みとって なさけないで
 このまえ なかまのうちえ ポリ公 きおった
 かぞくの なまえと 車の いろ
 きいただけで かえりおった
 ラーメンや の でまえ みたい やった》

などと揶揄して書いた手紙を送られる始末。

だったと言うが、しかしおれがここで書きたいのはそんな昔の話ではなく今のコロナについてである。今年になって感染が爆発的に増加と言うが、けれどもテレビが言っている「今日は○人」という数字は、【検査したら〈陽性〉と出た人間】の数なんだろう。たとえば「今日は東京で1万9876人が新たに確認されました」とテレビが言うには、その数以上の都民を検査しなければならない理屈だ。

では何人を検査している? それがわからない。テレビはただ、【その日の新たな確認数】を挙げて「これこそ専門家が【波が来る数字】とするものです」と言うだけで、決して分母を言わないから。

ここで言う〈19876〉は分数の分子である。5万人を検査してその数ならば50000分の19876。ほぼ5分の2であり、東京都民5人につきふたりの割で感染している計算になるから、都の人口を1200万として40パーの【480万人】と推定を出すことができる。

わかりますね。小学生でもたやすく理解できるレベルの簡単な算数の問題だ。しかし分母の【何人を検査したか】を言わないから、この計算をすることができない。10万人を検査しての2万人なら5分の1で、東京都民の20%。240万人が感染してる計算になるし、2万人を検査して19876人だったのなら東京でコロナに感染していないのは1%もいない計算になってしまう。

わかりますね。小学生でもたやすく理解できるレベルの簡単な算数の問題だ。同じ〈19876〉でも分母がいくつかによってまったく話が変わるので、その日に何人検査したのか公表されないのは困る。【感染の新たな確認数】は〈分数の分子〉なのであり、【分母なしには意味を持たない数字】と呼ぶしかないものなのだ。

だがしかし、テレビでしゃべる専門家は、【今日の新たな確認数】だけを見て「これこそ〈波〉が来る数字だ」と言い、

「都全体で50万人が感染している可能性があります。最大80万人になっている可能性も……」

などと続ける。「さささ最大80万ですってえっ!」とスタジオが騒然となるが、しかしあなたはそんなニュースの番組を見ながら、

「この学者、テレビに出るたび同じことを言う気がするな。ずっと前、『今日は200人』とか『300人を確認』とか言ってた頃にもやっぱり、『都全体で50万人が感染している可能性があります。最大80万人になっている可能性も……』なんて言っていなかったかな。同じ相手がそのときも、「さささ最大80万ですってえっ!」と返していなかったかな」

と思うことはありませんか。

どうでしょう。なぜ「可能性がある」などという言い方をするのでしょう。専門家なら分母を知ってるはずじゃないのか。日に何人を検査して「今日は234人」とか「今日は19876人」と厚労省が発表するのか知っているはずじゃないのか。毎日5万を検査しているものとしたら240を掛ければいいから、「今日は234人を新たに確認」と言われたら、

「234×240=56160。都全体で5万6千が感染してると推定できます」

とか、「今日は19876人を新たに確認」と言われたら、

「19876×240=4770240。都全体で477万人が感染してると推定できます」

と言えるはずじゃないのか。それでこそプロだろう。しかしどうも「今日は○人を新たに確認」と言われたときにどうも必ず、それがいくつかにかかわりなく、

「都全体で50万人が感染している可能性があります。最大80万人になっている可能性も……」

〈専門家〉と呼ばれる者らはこのくらいの数を挙げる気がする。でもって、「これこそ〈波〉が来る数字です」と言ってる気がする。そのように思ったことはありませんか。



   東京都で2万人を新たに確認するためには、
   日にそれ以上の都民を検査しなければならない。



わけだ。わかるね。5万人とか、10万人とか、そのくらいの数だ。それは一定でなければならず、変えてはいけない。世に公表せねばならぬし、変える場合は「変えます」とやはり公表せねばならない。【日に10万】と決めたなら、毎日毎日10万人だ。その日を作業を終えてみて「今日は9万5678人を検査した」とか、「今日は10万4321人を検査した」とか、そのくらいの前後はあっていいけれどもそれ以上はダメだし、やはりその都度正しく公表せねばならない。

わかりますね。今年1月10日頃に日に1万を検査して「今日は2千人が陽性だった」と言っていたのが今は10万を検査して「今日は2万が陽性だった」ともしも言っているとしたら、割合としては20%のまま変わってないのだから増えてない。感染は拡大なんかしていないのがわかりますね。分母は決めたら変えてはいけない。必ず一定にせねばならず、変える場合は「変える」と言わねばならないのだ。

わかりますね。厚労省がインチキをしてないのなら1日に検査する数は一定だ。【日に5万】と決めているなら毎日毎日5万人。【日に10万】と決めているなら毎日毎日10万の都民を検査していることになる。

インチキをしていないなら。しかし何人を検査してるかわからないので仮に毎日10万人を検査しているものとしよう。どうやるんだ。グリ森事件でしたように〈ローラー作戦〉でもやるんだろうか。「今日は葛飾区亀有の住民を10万人」と決めたら亀有にローラー掛けて、10万人を検査する。「今日は志村けんの里、東村山市の住民を10万人」と決めたら東村山を一丁目二丁目ワーオとローラー掛けて、10万人を検査する。

でもって、「今日は1万5千人が陽性でした」とか「1万6千が陽性でした」と言う。うん、それはいいけれど、日に10万を検査してるなら今年に入って40日が経つんだから、累計で400万。東京都民1200万中の3人にひとりがローラーに掛けられていなければならない理屈になる。

それだけの数が検査を受けて陽性か陰性か確かめられてなければならない理屈になる。【日に5万】でも40日間で200万。都民6人にひとりの割だ。そして東京都に限らず、日本全国、どこの県でも数人にひとりの割で今年に入ってこの40日の間にコロナの検査を受けてなければならない。そうでなければ今にテレビが言うような数を確認できない道理だ。
作品名:ヤマト航海日誌7 作家名:島田信之