樹海にて
「ここが、もはや誰も出られないと言われるような場所か……」
方位磁石が狂うなどと聞かされてきたが、思っていたより分かりやすい日光、そして作られる影の方向と比べても、方位磁石はごく普通に北を指し続けているように見えた。スマートフォンのGPSと比べても、それはごく普通に北を指し続けているように見えた。
「思ってたよりつまらん……」
と、その時であった。方位磁石が異音を上げ始めた。
ボ……ホ……ヤ……ジャ……。
若者が音源を確かめると、それはどうしても方位磁石なのだった。
「な、何だこれ!? 異音、いや奇声!?」
方位磁石は正しく北を指し続けながら、はっきりと続けた。
「ボク、方位磁石辞めてジャニーズタレントになりたい」
「その方向で狂うのかよ」
(了)