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聖者ヴァレンタイン

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私は努めて謙虚にしてる。
 私は私が、私の顔がすっごくカワイイことを普通に自覚してる。
 だって、小さい頃からずーっと言われてきたし。いくら何でも気づくよね、っていう。
 けれども、それを鼻にかけてしまって、それが言動に出てしまうと角が立つのも普通に知ってる。最悪、いじめのターゲットになるよね。
 だから控えめに、控えめにするのが私の処世術。

 という私なんだけど、私はこの高2のヴァレンタインデーに初めて、私自身から打って出ることにした。私の力を、ついに積極活用することにした。
 私は一応進学校に通学してるんだけど、ここに将来有望なひとりの男子がいる。
 見た目は明々白々に、もっさりだ。もっさりを戯画化したような、もっさり・オブ・もっさりズ。外見だけなら足切りだ。
 でも彼は、お医者様になる見込みが高い。それもただお医者様になるだけじゃなく、地元のN県立医科大学――あ、念のため説明すると、医学部の中で結構上位なんだよ?――に合格して将来お父さんの病院を継ぐというのが彼のプランらしくて、その達成の見込みが高い。実際模試の成績がすごいから。
 と言っても、百パーセント思い通りになるとは言えない。そこが私の賭けるところであり、恩を着せるところになる。彼の成功が確定してから言い寄るのでは、全然手遅れなのだ。
 目指せ糟糠の妻。
 誰も手を付けないうちに、女性に全く免疫の無いうちに、私のチョコでノックアウトだ!

「……ごめん」
 えっ……?
「この先、君より美人に言い寄られると思うから」
 ええええええええええええええっ!?
「じゃあ」
 もっさりが、私を置いて歩いていく。
 は……はああああああ調子コイてんじゃねーよこのダボが!?
 おおい! 乙女の繊細な自尊心どうしてくれんだよ!? どうしてくれんだよっ!? N木坂でセンターを張れる(かもしれない)のを、せっかく来てやったのに……。
 気が付くと私は彼を追って走って、その後頭部をロックオンしてチョコの箱を振り上げた。
「うおりゃーノックアウト!」

(了)
作品名:聖者ヴァレンタイン 作家名:Dewdrop