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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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かば焼き(おしゃべりさんのひとり言 その79)

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かば焼き



『かば焼き』って、アフリカの『カバ』の肉だと思ってた。
ホントにですよ。幼児の頃の話だけど。

初めてかば焼きを食べたのがその頃で、田舎のおばあちゃんが七輪で焼いてくれたやつだ。
まだ嫁ぐ前の叔母が、揶揄って僕にそう言ってたのを印象深く覚えていて、結局、何の肉か解らずに食べてたけど、僕はおばあちゃんのかば焼きが、大好物だった。

じゃ、それ何のお肉?

普通なら『ウナギ』って答えると思うけど、小学校の頃の僕の記憶だと、『ナマズ』の方が印象に強く残ってる。
なぜかと言うと、おばあちゃんが焼くかば焼きは、おじいちゃんが釣って来たものだったから。

僕は母方の実家が大好きで、よく遊びに行っていたんだ。
おばあちゃんや叔母二人が可愛がってくれていたのもあるけど、特におじいちゃんと川に行くのが好きだったから。
おじいちゃんは旧国鉄職員をしながら、家のすぐ近くで川漁師もしていた。
木造の小舟を竹棒で操って網を張ったり、岩の上でマスやコイを釣ったり、アユの友釣り名人でもあった。
僕も一緒に魚釣りを教えてもらって、ハヤと呼ばれる雑魚釣りが楽しみで、釣った魚を庭の池に放して遊んでた。
それでか、現在も自宅の水槽には、淡水魚を多数飼育したりしてる。

そんなおじいちゃんとする釣りで特に面白いのが、ウナギの延縄漁。
ミミズやドジョウ、手長エビなんかを予め捕まえておいて、それらを餌に、長いロープに何本も糸と針を付けて、夕方に川に仕掛けると、翌朝獲物が掛かってるってわけ。
でも釣れたウナギは料理屋に売られるから、家に取っておく分はそうそうない。
そりゃ、おじいちゃんが僕にも食べさせてくれるけど、それは一匹分くらいだけ。
でもその代わりに、ウナギ以外の魚なら、いくらでも食卓に上ることになるんだ。
それがナマズだった。子供の頃の僕は、断然こっちの方が好きだった。
ナマズって言っても種類があって、5~60センチくらいになる普通の『ナマズ』の他に、せいぜい30センチくらいの『ギギ』って言うナマズもいた。
そこは清流なので泥臭くなくて、どれも普通に食材として成り立ってたみたいだ。

それらをかば焼きにしてしまうと、甘だれなら子供も大好きに決まってる。
ウナギと比べてナマズは肉厚で、食べ応えもある。
ご飯に乗るその身は、ウナギもナマズも大きさ以外では違いが判らない。
でも味は確かに違う。
総合的には、ご存じの通り、ウナギの方がはるかにおいしい。
一方、ナマズの食感は、やや白身魚って感じがする。
ウナギみたいな身質に見えて、案外ほろほろしてる。
思い切って解り易く言うと、Mのフィレオフィッシュの食感。
でもギギは、また一味違うんだ。
身が小さいのもあって、ナマズよりウナギっぽい。
僕はピンポイントで、こいつが大好きだったんだ。
延縄にこれがかかっていると嬉しかった。
でもおじいちゃんは、僕には触らせてくれない。
なぜかと言うと、胸ビレにトゲがあって、それが刺さると痛いんだよ。
だから、おじいちゃんの手裁きを見てるだけだったから、余計に関心が強くなってたのかもしれないな。

こんなのをたくさん食べてたんで、昔からスーパーのウナギのかば焼きを買って来ると、物足りなくてくて仕方ない。
物によっては、ナマズにも及ばないんじゃないかな?
でもそんなウナギでも、よだれが出るくらいの人気商品なんだから悔しい。
さすがに「ナマズがおいしい」と言うと、みんな引いてしまうけど、僕は天然ウナギと養殖ウナギの違いくらいなら簡単に判かるんだ。
仲間たちとバイクツーリングして、立ち寄った普通の喫茶店で出された鰻丼を、なんの期待もなく一口食べて(おや? これはおかしい。天然ものだ)って気付いた。
その店のオーナーが店の裏の湖で罠を仕掛けて獲ったやつだと知って、みんな大喜び。得した気分。

20年位前までの養殖ウナギって、海外から稚魚を調達したアンギラ・アンギラ種って言うヨーロッパウナギだった。
かつて中国や台湾から輸入されるのも、みんなそいつだったらしいよ。
それは日本ウナギと味が全然違ったので、日本産天然ものとの違いははっきりしてた。
でも最近は日本沿岸で捕獲される稚魚、アンギラ・ジャポニカ種の養殖が主流。毎年のように中国、台湾も、こいつを乱獲して問題になってる。
その品質は養殖でも天然ものに近くなってはいるが、その餌の特徴で味が変わってしまう。
運動不足も相まって、脂が多く生臭く感じるから、濃いめのたれに付けたかば焼きでしか食べられない。
天然ものだと白焼きにしても、おいしく食べられるんだ。
関東では、かば焼きに『焼き』と『蒸し』を施すので、柔らかい傾向になるけど、うちのは関西風。関西では焼くだけで普通は蒸さない。
おばあちゃんのかば焼きもそうだった。
すると焦げ目も香ばしく、身に歯ごたえが残るんだ。

だから、脂ののった天然ものにこそ、価値があるんだろうな。

最近は、ナマズなんてめったに食べないな。
専門店に足を運んだこともあるけど、遠くまでわざわざ行くほどのもんでもないし。
それにスーパーでも東南アジア産の『パンガシウス』って言うナマズが、簡単に手に入るようになった。
でもさすがに、あの『ギギ』を食べる機会はもうないよな。

近頃ウナギの値段が、バカほど高騰してるじゃないですか。
『かば焼き』って言うより、『バカ焼き』か!って程に。
それでも年間を通しては、ほんの数回だけど、天然ウナギのお店に食べに行きたくなる。
2時間くらいの距離なら贅沢をしに、わざわざ出向いてしまう。
そんなお気に入りのお店が数件あって、それを年間ローテーションしながら足を運んでる。
ふるさと納税で、名産地のウナギを取り寄せては、冷凍庫のストックも切らさない。

では皆さん、最後に。ウナギで一番おいしい部位って知ってますか?

「天然ものならどこを食べても」って言いたくなりますけど、養殖ものでも美味しいところがあります。
それはズバリ、尻尾の先っちょ。
尻尾だけは、養殖でもよく動いて身が引き締まってるんで、歯ごたえがあるってわけ。
一匹を切り分けて食べるなら、僕はいつも尻尾をもらう。


     つづく