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ぜんざい

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陽射しが入り込むリビング兼仕事場にボクが居る。
仕事の手は止まっているのに机に向かうボクの手にはお気に入りの万年筆。この時間が何となく好きなんだ。インクの香りって落ち着くんだよね。替えのインクカートリッジを交換するだけなのだが 新たな気分に口元が緩んでしまうボクが居る。

これは?『もういくつ寝ると』で始まるあの歌に聞こえる鼻歌がボクの後ろから流れてくる。ボクは音程などない言葉で歌ってしまう。
「あと三百五十五日寝るとお正月かな」
歌って笑ってしまい、振り返りフローリングの床の敷物にちょこんと座るキミを見た。
「みゃぁ!」としっかり猫口なキミの笑顔に癒される。

クリスマスの夜に拾ったキミと何度目の新年を迎えただろうか。キミとの出逢いから感情の波は何度となく押し寄せ 静まり キミの周りとの関りも深くなったというのに変わらないキミの笑顔にボクの歳月は暮れずに過ぎている。
「鬼も休暇をあげないと可哀想だよ。キミにかかれば笑い転げて止まらないね」
「にゃ?」
「来年の事を言えば鬼が笑うっていうだろ」
「にぃぃ…」
「まあ、滅多な事より この風景が見える気がするよ」
ふと座卓テーブルの上に置かれたモシャモシャが気になり、インクを交換した万年筆をいつもの場所に置くとキミの傍らに寄った。
不思議そうに覗くボクにキミは ちょっと得意に唇を上げて目を細めた。
「にゃにゃくにゃ」
それを聞いてボクの眉がどしゃんと落ち眉間に不快(深い)皺が出たのは言うまでもない。
「ふむむ、これね。これって… 食べないよね?」
その高速に頭を振りふり頷くキミにひと安心した。
その並べられたものが 七本の道に生えていそうな草とわかったボクは じっくり見てみた。この寒い季節にどんな草が生えていたのか? 
「あれれ?ずるしてない?」
キミが、七種の草を集めたならば 褒めてあげなくてはとボクは手を温めていたのに、どう見ても六種までは良しとしても あと一種は惜しい。葉を違うようにアレンジしてある。
疑いのボクの眼差しに キミの最強の見つめ返しが刺さる。
んー可愛い。今年もこれで過ぎていくんだろうな。
キミの両親に言いつけたい。すごく可愛いキミの事。
でも、絶対言うものか!これはボクの、ボクだけの特権さ!

作品名:ぜんざい 作家名:甜茶