悪夢(おしゃべりさんのひとり言 その77)
悪夢
物事がうまく進んでいると、マイナスのことなんて考えなくていい!
自信が付いて、どんどん前に突き進んで行けるぞ・・・って?
いいや、そうとも限らないんだ。
どんなにスムーズに行ってるようでも、一つひとつの行程で乗り越えなきゃならない課題があると、一応、心配したり不安になったりってこと、あるもんでしょ。
僕自身、あまり意識してないから気付かなかったけど、そのことに今朝気付いた。
大体うまく行ってるんですよ。僕の毎日って。
とんだ大トラブルが起こっても、そのタイミングで偶然他の何かがきっかけになって、解決につながったり。運もいいと思うんだけど。
でも深層心理のその奥で、本当は(不安で不安で悩んでたんだ)って確信したんだ。今朝。
よりによってクリスマスイブの朝。こんな夢を見るんだもの。
**********
う~ん、バイクで行こうかな。
大学までは30分くらいかかるけど、もう15分しかないな。
まあ、少しくらい遅刻しても大丈夫だけど。
あ、駐輪場は遠いから、15分は余分に見ておかないといけないか。
てことは、30分遅刻だ。
これじゃ、出席扱いにならないかも。
それならもう休んじゃおうか。
多少サボっても大丈夫だから・・・。
あれ? そう言えば、そんな感じで最近大学行ってないな。
それに、今日の授業が何かもよく分からない。
そうか、時間割って貰ってなかったな。
それは、今年度になって一度も通学してなかったからだ。
ヤバイ・・・友達はどうしてるんだろ。
あ、連絡先聞いてないから分らないや。
と言うより、顔も知らない!
一度も行ってないから当たり前か!!
このままじゃ、落第してしまうんじゃないかな!!?
**********
こんな夢よく見るんです。
この夢見てる時、自分はまだ大学生だって思ってて、かなり長く授業に出てないって気付く。
そして、手の打ちようがなくて途方に暮れる。
またある時は、こんなパターンも。
**********
体育の授業なのに体操服がない。
これじゃ授業が受けられないって気付いた。
じゃ、この日の体育は見学するしかないかって考える。
でも、いつから体育の授業出てないだろう?
ここ数年は出てないぞ!
これじゃ卒業出来ないんじゃないか!?
**********
こんなふうに、八方塞がりの状況。
自分がとうに大人になったことを覚えていなくて、落第したり卒業できない不安にばかり囚われている。
でも、これにはちゃんと理由があるんです。
実際に大学生だった時、僕はゼミの大事な単位を落としてしまいました。
そのゼミで卒業論文を書かないといけなかったんですが、病気になってしばらく休んでしまい、課題提出に間に合わなかったからです。
その時の不安が、今も深層心理の奥底に残っているのでしょう。
でも、ゼミ以外の成績の総合計で、卒業に必要な単位が奇跡的に足りたので、無事卒業は出来たんですが、もう30年も前のことなのに、トラウマってやつでしょうね。
(長編作『聞く子の約束』にその詳細あり)
なんでこんなに大学の時のトラウマを、夢で繰り返し見るのかな?
起きた時に(ああ夢でよかった)って安心してすぐ忘れるけど、この夢、頻繁に見てる気がする。
目が覚めて(またこの夢見た)って思っても、目を開けると完全に忘れちゃうんだ。
それに気が付いて、数えてみようと思い立ったのが先週。
この1週間で4回見た。
コワっ! 異常だ。僕、絶体に異常だ。
夢の分析が得意な臨床心理学者がいれば、カウンセリングをお願いしてもいいですか?
僕はサボり癖がひどいわけじゃない。遅刻なんかしないし、むしろ授業にはしっかり出てた。そんなことじゃ、悩むはずない。
今もその感覚のまま生活してるから、時間にはきっちりしてるし、予定も準備通りにこなすのが得意なのに。
それに誰より100点満点を目指す性格だから、物事を中途半端に放置することもない。
なのに、どうして落第する不安の夢ばかり見るんだ?
不安? 何かが不安なんだな。
時間に追われてるのか? どんなことでも計画的にスムーズに進める自信があるぞ。
最近、時間的に焦った覚えがあるとすれば、乗ってた飛行機の遅延で、次の乗り継ぎ便に間に合わなくて、市民運動会のリレーで走るより真剣に、空港を全力疾走したことくらいかな。飛行機の問題は自分じゃ如何ともし難い。
なら、予定通りに物ごとが進まないことに対しては?
物事がスムーズに行かない場合、簡単なことで他人がミスしてるとリカバリしてあげるけど、本心では(何やってんの!)って思う。
だって、その人それを教訓に成長してくれたらいいけど(ダメだろうな)って、そんなジレンマを抱えてしまうもの。
特に仕事の出来、不出来については、その人の行動が僕の年俸に直結する事柄だもんね。
そんなだから僕はいつも、自分でコントロール出来ない他人の行動を危惧してるんだろうか?
自分の足を引っ張られることが怖いんじゃないかな? 僕って自己中心的だから。
これは僕の欠陥だ。こんな部分に夢の悪魔はつけ込んでくるんだ。
この悪夢を乗り越える方法があるとしたら、失敗しないように気を付けるんじゃなくて、失敗しても気にしないようにすればいいんだな。
あれ? 自分のミスなんか失敗とは思ってないぞ。必ずいい結果に結び付けて、辻褄を合わせるから。
そうか。やっぱり、これが出来ない他人に対しての苛立ちが、面倒になって、ジレンマとなり、うまく行かない不安になって、昔のトラウマに結び付いちゃうのかもしれないな。
それなら他人のミスを、自分にとっていい方に持って行くように考えることにしよう。
「こんなミスをしてくれたおかげで、僕にはいいことがあった」というところまで物事を結び付けて考えれば、悪夢を克服できそうだ。
これでようやく今日を楽しめる。メリークリスマス!
つづく
作品名:悪夢(おしゃべりさんのひとり言 その77) 作家名:亨利(ヘンリー)