女神と旅人
水と食糧は尽き、旅人の運命はもはや風前の灯だった。
水が欲しい・・・。
そう思いながら、旅人はついに力尽き倒れた。
「旅人よ、どうしたのだ?」
遠くで声が聞こえる。
そうか、自分はついに天に召されたのか・・・。
「旅人よ、どうしたのだ?」
目を開けるとそこに女神が立っていた。
「め、め、女神様ですか!!?」
「わらわは砂漠の女神じゃ。旅人よ、どうしたのだ?」
「喉が渇いて死にそうです・・・どうか、み、水を・・・」
「あいにく水は持っておらぬが、わらわの乳を吸えば良かろう」
「お、お願いします!!」
一心不乱に女神の乳を吸う旅人。
「これ、旅人!!吸いながら舌をクルクルするでない!!」
「すいません。いや、吸ってますが。くせなんです」
「これ、旅人!!吸いながら、親指と中指でクリクリするでない!!」
「これもくせなのでお許し下さい」
「そなたのくせは、ずいぶんと気持ちの良いくせじゃのう」
「女神様、もう乳が出ません」
「乳が出なくても、そなたが変な吸い方をするから、別のところが・・・潤っておるぞ」
薔薇の泉からたっぷり蜜を吸った旅人は、元気を取戻し力強く歩き始めた。
旅人に手を引かれて、恥ずかしげに頬を染めた女神が一緒に歩いている。
女神は旅人に魂までも吸われてしまったようだ。
(終り)
作品名:女神と旅人 作家名:月音 光(つきねあきら)