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月音 光(つきねあきら)
月音 光(つきねあきら)
novelistID. 69444
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足軽の恋

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昔昔のある日、足軽が身分の違いも顧みずある国の姫に恋をした。
大それたこととは知りつつも、姫への想いを止めることができない。
日に日に想いは募るばかり。


足軽は想いを姫に伝えたくて、いてもたってもいられず
想いをつらつらと手紙にしたためた。
そんな大それたこと・・・恋は盲目とはよく言ったものだ。

この足軽、どうやらほんのりと想いを伝えるのが苦手と見え、
綴られている言葉はひたすら槍の一突きのみ。
こやつ、ひょっとしたらイタリア人か!


もちろんそんなことは誰にも言えるわけがない。
知られたらすぐさま首をはねられてしまうだろう。
くる日もくる日も足軽は遠くで姫を見ているしかなかった。


ある日足軽は、姫と大国の若君が仲良く話しているのを見た。
たったそれだけのことで、足軽の心は張り裂けそうになった。


始めから届かぬ想いだけれど、せめて手紙を渡したいと足軽は決意した。
懐に手紙を入れて姫の通りそうな場所で姫を待つ。
偶然にも警護の者に囲まれてはいるが、姫に遭遇。
地に膝を付き目を伏せ姫の接近を待つ。


姫が目の前を過ぎようとする瞬間、姫を見て声を出そうとした足軽だったが、
一瞬早く姫が口を開いた。

「これ、声を出すでない。そちが何を言いたいか目を見ればわかる」

「その想いには応えてやれぬが、そちの気持ちだけを受け取っておく」

「懐に何やら持っているようだが、それを出すとそちの命はない」

「その想いを他のおなごに向けるが良い」

そう言い残して立ち去る姫。
あとには高貴な香の香りだけが残っていた。


(終り)