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師匠と卵 ー「卵の大冒険」の巻ー

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師匠と卵   ー「卵の大冒険」の巻ー

 あまり遠くない昔、あるカゴシマと言うところに1人の若者が住んでおりました。
 若者の名は卵と言い、1人で墓石屋さんをやっておりました。

 その日仕事のなかった卵は、汚れ放題の部屋の中で、とりとめもないことを考えながら、ボーっと天井を見つめておりました。

「カヌーが欲しいなぁ」
 以前からカヌーが欲しいなぁ、と思っていた卵でありましたが、そんなお金もありませんし、それは夢だと思っていたのであります。
 でも今日のようなのんびりとした日には、そんな夢が頭の中をぐるぐる回るのでありました。
 と、そんな時、
「おいおい、卵、卵はいるか?」と、友達のヒラリンの声がしたのであります。

ヒラリン:今日は仕事は休みかい?
卵 :あー、暇でぶらぶらしていたところさ。
ヒラリン:俺、今さぁ、カヌー屋さんに行ってきたところさ。
卵 :えっ、カヌー屋さんに行ってきたって‼
ヒラリン:こんなにいっぱい、パンフレットもあるよ。
 卵はびっくりして、ヒラリンと彼の持ってきたパンフレットを見比べました。

卵 :俺が今、何を考えてたか、お前にわかる?
ヒラリン:そりゃあ、わからん。
卵 :カヌー、欲しいと思ってたんだ!
ヒラリン:そりゃ、びっくりだ!
卵 :そうさ、びっくりだ!
 今から二人で、カヌー屋さんへ行こう。
ヒラリン:そうしよう、そうしよう。
 二人はカヌー屋さんへ出かけたのでした。

卵 :俺はこの白い船だ。
   お前はどれだ?
ヒラリン:俺はこの赤い船だ。
卵 :そりゃ、いい船だ。
   俺のほうがいいけど。
   ところで、金はお前のクレジットで払っておいてくれないか。
ヒラリン:いいよ、いいよ、OKさ。
卵 :それじゃあ早速、船をもらっていこう。
ヒラリン:そりゃぁ、いい考えだ。

 卵は1円のお金も払わずに、白いカヌーを、その日のうちに手に入れたのでした。
 時は11月、暇を見つけては、詐欺のようにして買ったカヌーに乗りに行く卵でした。
 そしてコロンコロンとひっくり返り、その冬、卵は腹いっぱい海の水を飲みました。
 でもまだその時には、卵を待ち受けている、自分の大冒険を何一つ知らずにいたのです。

ーつづくー