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師匠と卵 ー「卵 オタッキーになる」の巻ー

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師匠と卵   ー「卵 オタッキーになる」の巻ー

 あまり遠くない昔、あるお寺に立派な和尚様が住んでおりました。そしてその和尚様には、ちょっと出来の良くない、未熟な弟子の卵がありました。

 ある日のことです。師匠を訪ねてきた卵が、例のごとく師匠の前でぼーっとして座っておりますと、師匠は卵に向かって言いました。

師匠:「もうそろそろ滝行でも如何です?」
卵 :「はい、分りました。」
卵は元気よくそう答えました。

 数日後。
師匠:「滝行のほうはどうなりました?」
卵 :「はぁー、それがまだ行ってないんです。
   滝行に使う白い着物がまだできてないものですから…。」
師匠:「パンツ1枚でよろしいがな。」
卵 :「はぁ・・・。」と言ったまま、パンツ、じゃなかった、卵は赤面したまま黙り込んでしまいました。

 翌日、意を決した卵は滝へと出かけていきました。

 パンツ1枚になって頭から水をかぶった卵、般若心経を三巻唱えるぞと意気込んで滝壺に入り、恐る恐る流れ落ちる滝へと近づいていきました。
 しばらく流れ落ちる水のすぐ側に突っ立っていましたが、「エィ!」と掛け声よろしく、水の真下へ飛び込んだのです。

 「マカハン、ニャ・・・。」
 頭の真ん中で水を受けたショックのために、卵が滝壺の中にいたのは、時間にしてほんの1、2秒❗️一目散に逃げ出した卵でした。
 しかしながら、翌日も翌々日も卵は懲りずに、滝に打たれに出かけ続けたのでした。

 4月1日より21日までの、21日間滝行を続けようと決心した卵は、オタッキーとなって来る日も来る日も滝に通い続け、とうとう満願成就の日を迎えたのでしす。

 その朝滝行を終えた卵は、その足で東寺さんへお参りに出かけました。満願を迎えたら報告とお礼に行こう、それは滝行当初からの卵の願いだったのです。
 東寺さん着いた卵は、まず大師堂を訪れました。

卵 :「お大師様、お陰様で無事21日間の滝行を終えることができました。ありがとうございました。」

 大師堂の賽銭箱の真ん前に立って、熱心に拝んでいた卵でしたが、その時卵の頭のちょうど真ん中で、飛んできたお賽銭がポォーンと音を立ててはねたのです。それもとてもきれいな輪を描いて飛んできて、きれいな、きれいな輪を描いて跳ねたのです。

卵 :「あいたっーーー‼」
 驚いて振り返った卵でしたが、あまりに大勢の人がいたので、何が起こったのか、誰が投げたのかも分かりません
卵 :「おかしなこともあるもんだなぁ?」
 首をかしげながら、それでもなんとか気を取り直して、大師堂を後にした卵でありました。

 いろんな出店が並んだ境内をプラプラ歩いていた卵は、ちょうど喉も乾いておりましたので、通りかかった茶店に入ることにしました。
 お茶を頼んで椅子に腰掛けた卵は、ゆったりとした充実感に満たされて、のんびりと辺りを見渡しておりました。そうこうするうちにお茶が運ばれて参りまして、両手でお湯のみを握って、静かにお茶をすすり始めた卵でした。

 「ゴッツーン‼︎」
 何が起こったのか、卵には理解することはできませんでした。いや、何が起こったのか分かっていたのです。だって目の前に立っていた、テントを支える柱が、風も何もないのに、少し下を向いた卵の頭の真ん中を直撃したのですから。その上その柱が倒れてくるのをまるでスローモーションのように、卵もじっと見つめていたのです。

卵 :「あいたーーー‼︎」
 卵は頭を抱えてその場にうずくまりました。その痛かったこと、痛かったこと。おまけに熱いお茶までこぼしてしまって、もうふんだりけったりの卵でありました。

 お寺に戻った卵は、その日の不思議な出来事の一部始終を師匠に申し上げました。

卵 :「お師匠様、どうしてこんなに2度も頭をぶつけたのでしょうか。せっかくお礼参りに参りましたのに・・・ 。」
 卵は不思議でたまらないといった風で師匠に尋ねました。
師匠:「まぁ、『頭が高い‼』といったとこところでしょうなぁ。」
 師匠はニコリともせずにそれだけ言うと、ポカンとしている卵を1人残したまま部屋を出て行ってしまわれました。

                    終わり