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Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚

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「何だか、無理に離すのも可哀想ね……」
「お二人さえよろしければ、私はリルさんが目を覚ますまで、このままでも……」
 言われて、リリーがリルの胴を抱えていた手を離すと、リルはまたぎゅっと久居に密着した。
「それじゃ、この毛布と救急箱はあなた達で使ってちょうだい」
「ありがとうございます」
 リリーは、こちらに頼ろうとしない青年の姿にほんの少し苦笑を滲ませつつ、毛布を草の上におろす。
「ここに置いておくわね」
「あ、はいっ」
 黒髪の青年は、リリーがしゃがむと何故か一緒にしゃがみ込んだ。
 そして、リリーが立つのに合わせて立ち上がる。
(怪我でも隠してるのかしら……。まあ、そろそろクザンが着く頃よね。治療はあの人に任せましょう……)
 リリーは不審な動きを気にしながらも、後は夫に任せることにして、その場を離れることにした。
「じゃあ、私はお弁当を持ってくるわね」
「度々申し訳ありません……」
 久居はリリーの姿が見えなくなるまで見送ると、ようやく近くの木の幹に背を預けた。
(咄嗟に誤魔化してしまいましたが……)
 久居は、そこに残った足を見る。
(私達に関わったせいで、リルが人を殺めてしまった……)
 当のリルは、久居の腕の中ですやすやと寝息を立てている。
 その幸せそうな寝顔を見つめながら、久居は願う。
(せめて、人という存在が彼らにとって軽いものであるといいのですが……)