Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚
優しく問われて、思わず息を吸い込んだフリーが、男のさっきの言葉を思い出す。
『お前はそのための人質なのだからな』と男は言ったはずだ。
(不用意に呼んじゃダメだ……。これは、菰野を嵌めるための罠なんだから……)
言葉を飲み込んだフリーへ、目の前の男が無遠慮に手を伸ばす。
「え……」
男の手は大きく、フリーは身動きが取れない。
突然の事に思考が凍り、少女は底知れぬ恐怖を感じた。
(やだ……っっ、怖い!!)
反射的に、ぎゅっと目を閉じたフリーの頬を、男の指先が掠める。
瞬間、少女は叫んでいた。
「助けて! 菰野!!」
作品名:Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚 作家名:弓屋 晶都