Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚
静かな静かな森の中。鳥の声すら聞こえないそんな場所に、二人は居た。
倒れた大木をベンチ代わりに、金髪の少女と栗色の髪をした少年が隣り合って座っている。
少女は触角を髪と一緒にハーフアップの要領で結んでいた。
その上を大きめのリボンで隠している。
「……と、言うわけなんだ」
菰野が苦笑とも自嘲とも取れないような笑みを滲ませつつ、言葉を切る。
「じゃあ、そのお供の人は、菰野がここに来てる事知ってるかもなんだ?」
フリーの問いに、菰野は今度こそはっきりと苦笑を浮かべて答える。
「うーん……多分」
「けど、そのお供の人はこんなとこまでは来れないよね」
「そうだね、どこまで知っているのか……」
と答えつつも、菰野は内心、久居なら全てを把握していてもおかしくないような気がしていた。
「フリーさんは、こんなに度々僕と会ってて大丈夫?」
菰野の心配に、フリーは笑顔を見せる。
「うん、最近はリルも全然ついて来るとか言わなくなったし……」
と、そこまで答えて疑問に思う。
「あれ? そういえば何で何も言わなくなったんだろう。ちょっと前までどこに行くにもしつこく付き纏ってきたのに……」
そんなフリーの言葉に、菰野の笑顔が小さく引き攣る。
フリーと菰野は、同じような顔でしばし見つめ合うと、声を重ねた。
「「まさか……ね……?」」
作品名:Evasion 1巻 和洋折衷『妖』幻想譚 作家名:弓屋 晶都