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狐鬼 第二章

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窓掛(カーテン)越し「秋は夕暮れ」の如く
夕陽のような朱色の(朝日)光が射し込む

吹き戻しのような鳶(とび)の鳴声に瞼を開(ひら)ければ
翡翠色の眼と目が搗(か)ち合う也(なり)、「獣」姿の白狐が挨拶する

「おはよう」

「おはよう」と返せば
自身 (すずめ)の身体を包み込む尻尾が一斉に解(ほど)けていく

名残惜しさに
(慌てて)一本、取っ捕まえて胸に抱えて「あったかい」と頬擦りする

此(白狐)の尻尾の御蔭で?布団入らずの生活だ

何しろ二人共、無職だ
節約は出来る限りした方がいい、と思うすずめの傍(かたわ)らで

(頬擦りされる)状況に飽きてきた白狐が
ぶんぶん!尻尾を振り始めて来たので「御免」と、言って手放す

然うして

窓掛(カーテン)を開(ひら)く序(つい)でに
掃き出し窓を開(あ)けて露台(ベランダ)へと足を踏み出す

欠伸(あくび)と同時に
自身 (すずめ)の(両)腕を上げて思い切り伸びをする

「朝だ」

当たり前だが
当たり前ではない「朝」だ

愛犬 (しゃこ)が(自室)扉前で出迎える「朝」だ

根明の母親が御飯茶碗片手に鼻歌を歌う「朝」だ
根暗の父親が目を通す新聞紙を掲げて挨拶(代わりに)する「朝」だ

木漏れ日の下
通勤、通学する人達が行き交う
河川沿いの遊歩道を(学校へと)歩いて登校する

制服姿の学生達で是又(これまた)、行き交う
廊下を足早に歩いて教室の引き戸を引け開(あ)ければ
周囲の喧騒を余所に射し込む日溜まりの中、読書に耽(ふけ)る彼に会える

其(彼)の向かいで朝練を終えた(らしい)
ちどりが前髪なしのポニーテールを揺らして自分 (すずめ)に手を振る「朝」だ

心 做(な)し
鼻を啜りながら近くの海を眺める

歩くしかない

歩けるだけ
歩けるだけ歩いたら(又)、会えるかも知れない

其れでも

歩けなくなる迄(まで)
歩けなくなる迄(まで)、歩いたら

「屹度(きっと)、其処(そこ)で会える」

自分 (すずめ)自身に言い聞かせる

すずめの耳に防火壁越し
露台(ベランダ)の(掃き出し)窓の開閉する音が飛び込む

「おはようございます」

的切(てっきり)、はつねと思い挨拶すれば
返って来た挨拶の主(ぬし)は(煙草)一服する、くろじだった

「おはよ」

「早起きだね?」
「若(も)しかして早起き得意?」

故(ゆえ)の早寝、か
と、独言(ひとりごち)るくろじを余所(よそ)に

相手がくろじで慌てるし
相手が会話を振って来たので慌てるし

で、あたふたする
すずめは兎に角、問われた事に答える

「は、はい」
「早起きは(得意ではないが)します」

等(など)と小小、頓珍漢(とんちんかん)な
すずめの答(こたえ)を気にする風もなく

「其奴(そいつ)はいい事だ」

「、はい」

「「早起きは三文(百円程度)の得」だからな」

「、はい」

「三文(百円程度)を笑うなよ?」

「、はい?」

「何(いず)れ、其の三文(百円程度)で泣く羽目になるからな」

と、早朝の露台(ベランダ)で
近所迷惑にも呵呵(かか)笑うくろじが「ちょっといい?」と訊(き)く也(なり)
すずめの返事も待たず防火壁越し、ひょっこり顔を覗かせる

途端、満面の笑みを浮かべて打診する

「(俺の店で)アルバイトしませんか?」

くろじの唐突な提案に目を丸くしながらも
「アルバイト」と言う言葉を反芻(はんすう)する、すずめの背後

「っよ」

突如、挨拶する
くろじの様子に振り返えれば
人形(ひとがた)に姿(なり)を変えた白狐が無表情で佇んでいた

然(しか)も(何故か)全裸で(?!)

(頭の)天辺(てっぺん)から(足の)爪先 迄(まで)見ずとも
胸元 迄(まで)、見たすずめが「みや狐!、服!服!」と、大慌てで部屋に引き返すが

服?!
みや狐の服って、あった?!

咄嗟に自身 (すずめ)の、上着を洋服掛(ハンガー)から取るも
抑(そもそも)、白狐は自身の毛皮で姿、形 等(など)、如何様(いかよう)にもなれる

其(毛皮)の事実に至る
上着を手に(部屋の片隅で)固まるすずめは「如何(どう)言う事?」と首を傾げる

一方、(防火壁越しとはいえ)全裸で尚も無表情の白狐と二人切りにされた
くろじは取り敢えず、相手(白狐)の一物(いちもつ)を何気なく確認した後
(ヒュー!と)口笛を吹いて眴(ウィンク)を嚼(か)ます

然(そ)して一言

「風邪、引くぞ?」

男性諸君!

此(こ)れぞ
大人の、男性の余裕だぞ(はい?)

作品名:狐鬼 第二章 作家名:七星瓢虫