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第四話 くらしの中で

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手術


あと10日後に白内障の手術をする予定。
毎日どこかが調子が悪いので、大丈夫かなあと憂鬱だ。フレイルという症状のことを知ってから、自分は身体的にフレイルになりかけていると感じている。

友達が入院したことがないという私に驚いていた。亦、手術をしたことがないと聞いて、みんなより一番元気じゃないと同級生に言われた。そういえばそうなのかもしれないがそれほど元気ではないのだ。


自分的にはごろごろするのが好きでないので家に居ても何かをしている。車で外出すると用事をすませた後あちこち寄って、大型スーパーに行ったときは衣類や帽子なども見て回るから知らぬ間に時間が過ぎている。

この間車で隣町の鍼灸院で治療を受けた帰りに例のスーパーへ寄った。帽子のコーナーでは夏用の濃い緑色のつば帽を買った。帽子はよく買うので保管する容器がいくつも満杯になっているが捨てることもなく亦買う。つまり帽子を買うのは必要だからではなく趣味なのだと思う。


白内障はどうしてもしなければいけないほどには進んでいないのだが、車の免許更新が迫っているので是非しておきたいと思ったからだ。

大概の知人が、やったよ、アッという間に終わったと言う。それでもうれしいことはなく多少の不安はある。何しろ手足とかならまだしも、目だから想像すると怖いのだ。
そんなことを考えていると憂鬱で気が滅入って日が過ぎて行く。


そうだ、お産のときのことを思えば良いんだと気が付いた。
あれは日が代わるほどの長い時間の陣痛を乗り越えて新しい命を授かる喜びを感じた。そのことを思えば、たかが30分我慢すれば、新しい奇麗な視野が広がるのだ。
がんばろうと思った。


 完
作品名:第四話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子