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桐生甘太郎
桐生甘太郎
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六人の住人【完結】

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23話「安定」






こんにちは、時子です。今回は簡潔に、近況報告のみとします。

私は今、ノンシュガーのドクターペッパーを飲みながらこれを書いています。

何か飲み物がないと椅子に落ち着いていられなかったのは前からですが、コーヒーではなく炭酸飲料になったというのも、小さな変化でした。


ここ2日間は、大変でした。

前話の出来事は、「五樹との統合」と言うより、「観念体として分断された自分との再会」と言った方が、より正確かもしれません。

無論、「五樹としての私」はその名前を名乗りましたが、彼は他者ではなく私です。


その者の記憶が無ければ、それが自分だとは思えない。名前を聞かされた所でそれを自分とは認識しない。これは当たり前の感覚ですが、もしそれが「自分の一部」だった場合、自分が自分を認識しないという問題が生まれてしまうのです。

まるで、“ドグラ・マグラ”の世界を一部だけ切り抜いて貼り付けたようでした。


先程、「観念体として自分が分断されていた」と言いましたが、それが起きていた間、私自身は非常に落ち込みやすく、常に強迫的に活動に駆られていて、結果としていつも疲労から不安定でした。

逆に「五樹としての私」は非常に安定していて、悲観する事なく思考を働かせ、適度な活動の尺度を持っていた。そう思います。

分かたれていた頃、私は自分の疲労を軽視していて、「五樹としての私」はいつもそれを指摘していました。今なら感覚として「疲れているからやりたくない」という物が戻ってきているように思います。

疲れている時には休む。それをしっかり実行するようになったので、疲れが溜まる事が少なくなり、時には好きに家事が出来るくらいの体力も保てるようになりました。



今朝はあまり睡眠は取れなかったのですが、好きなだけ休む事は出来、今は洗濯をしていて、さっきはトイレ掃除も洗い物も出来ました。無理のない状態になれたと思います。


それよりも私が統合について気にしていたのは、五樹との統合をしたら、私はあまりに冷淡な物の見方をするようになるのではないかという心配でした。五樹にはそういう部分がありましたから。

端的に言えば、冷淡とはいかないまでもかなりそちらに傾いたのですが、それは私が元々持っていた現実的な物の見方なのだと思う事にしました。

「私は少し冷たいと見られる考え方を持つ人間なのだ」としっかり理解していて、やたらめったら人にぶつけたりしなければ良いだけです。

そんな風に、私は五樹として発言していた頃の自分の思考に、一つ一つ許容と肯定を与える作業を繰り返し、現在ではかなり安定して過ごせていると思います。

ただ、食事量はかなり増えてしまったので、運動をしなければいけないのですが。困りましたね。

ここまで見守って頂いた皆様に感謝して、また次も良い報告が出来ますように、今日もよく休もうと思います。




作品名:六人の住人【完結】 作家名:桐生甘太郎