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ソロモンの「教室」

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ソロモンの「教室」

 私は四日市高校の時に
「教育関係で生きていきたい」
 と考えた。そこで一番近い旧帝の名古屋大学の教育学部で学んだ。しかし、ある教授の「学校の授業を面白くする技術」の講義を聞いている学生の一部は寝ていた。面白くない授業だったからだ。私は大学で教育について何も学べなかった。

 卒業後、世間の評価の高い名古屋の大規模予備校に最高の教育理念や技術があるかもしれないと期待して英語講師として勤務した。しかし、何の研修もなく1年目に生徒アンケートで40人講師中2番になった。私は失望した。


 机上の空論や英語が話せない英語講師を見て

「アメリカには何かあるかもしれない」

 と考えた。ユタ州ローガン中学校で1年間教師をした。そして、「真実」を見つけた。それは織田信長がスペインやポルトガルから学んだもの。明治維新の時に坂本龍馬がアメリカから学んだ同じものだと信じた。

 帰国後、英検1級と通訳ガイドの国家試験に合格した。しかし、それはアメリカで学んだ英語とは異なるものだった。日本のトップクラスの学者が本当に駄目なのか疑問を持った。そこで、京都大学を7回受けて「受験英語」「資格英語」「ネイティブ英語」で書き分けて実験をした。

 ネイティブ英語の評価が最も高かった。トップクラスの学者は大丈夫だと安心した。

 分かったことを一般の人に伝えるため自分で塾を開いた。すると、9年間連続して京都大学に合格者が出た(うち3名は医学部医学科合格)。ところが、

「アホは教えんのか?」

 といった非難が大きくなった。織田信長や坂本龍馬が天寿を全うできなかった理由が分かった。

 日本文化は意固地で嫉み深いものだ。「出る杭は打たれる」。日本には世界のリーダーになるための哲学が欠けている。ここ三重県では中学生には校内学力順位を教えない。

「そんなことをしたら競争を煽るではないか」

 というのが教師の言い分だ。ところが、高校に進学すると、一転して校内学力順位を廊下に張り出す。

 生徒たちは、真逆の哲学に振り回される。


  無用な攻撃を避け自分の身を守るため、自分の指導方法の支持者だけに本当の英語の身に着け方、数学の解き方を指導することにした。クリスチャンだけれど全ての隣人を愛してはいない。30年間生き残れたのは支持者のおかげだと思う。

  私は、攻撃してくる人に手を貸すほどお人好しではない。攻撃してきたら10倍返しだ。


 織田信長が長島や伊賀で殲滅戦を行い比叡山を焼き討ちしたのは、それ以外に戦国時代を終わらせる方法がないと判断したのだろう。人類に戦争が絶えないのも分かる気がする。人類の多数派は議論で解決するより暴力で決着させようとする。


 たとえ、科学的なエビデンスがある客観的な事実でさえ気に入らないと力で押しつぶそうとする。怒鳴って恫喝すればいいと思う人が多い。

 私は少林寺拳法二段でその方法は通じない。


 私は話のできる子だけに本当に英語や数学の学力が上がる方法を教えている。モンスターペアレントやモンスターキッズは相手にしても叫ぶだけで時間とエネルギーの浪費。

 たとえば、英作文には「解答」が存在しない。予備校の「模範解答」もバラバラ。私の目から見ると赤本も青本も本番で書いたら8割の得点を獲得できない。


 英作文は他人の解答をマネしても意味がない。それで、私は添削はするが模範解答を示すことはしない。その事情を話したところ、ある生徒は

「田舎の塾講師ごときが何を言う!いいから黙って解答をよこせ!」

 と叫んだ。

 このような生徒は旧帝どころか地方の国立大学でさえ合格できない。「三単現、単数・複数、時制の一致、冠詞」といった基礎的なミスばかり繰り返すからだ。そのような指摘をしたら

「そんなことは分かっている!もっと赤ペンで指摘してください!」

 と叫んだ生徒もいた。そのような指導は小学生の低学年向け。有力大学に合格できる可能性はない。


 坂本龍馬の生きたのは150年以上前のこと。彼が日本のあるべき姿を口にしたら暗殺されてしまった。織田信長が生きたのは450年以上前のこと。彼がめざした日本の姿は受け入れられず本能寺の変の中で亡くなった。私はクリスチャンなので聖書をよく読む。2000年前の人間も同じで、イエス様はユダに裏切られて十字架に架けられた。


 愚かな人間は、いつの時代も、どの国にもいる。相手にしても時間とエネルギーの無駄。裏切られて終わる。


 21世紀に入った日本の学校では

「同じ服を着ろ。同じ靴を履け。同じ髪型をしろ。同じテキストを使え」

 と強制ばかり。異常状態なのだけれど気づいている人は少ない。私の教えていたローガン中学校では午後2時半になると学校は消灯だった。部活動などという制度は生徒を縛り付けるために存在して自由を奪う。自覚ある日本人はわずかだ。


 私はそのような人たちから距離を置く。自由を奪われたくない。一度だけの人生を浪費したくない。私は日本生まれの日本育ちで帰国子女ではない。最初は中学校から受験勉強として英語を学び、大学ではECCのような英会話系の勉強をし、NHKなどの語学番組を見続けた。しかし、英語は身につかなかった。


 英語を身につけたのはアメリカ生活。一言でいうとネイティブに「添削」してもらい続けただけ。ところが、私の出会った予備校講師は英検1級を持っている人はいず旧帝卒の方もいず、添削者としては不適切な方たちだった。だから、赤本も青本もイマイチの水準。Yahoo 知恵袋で添削を依頼する人がいるが解答は高校生レベルの場合も多い。


 こういう人では難関大は合格できない。なぜなら、学生時代の自分と同じで良し悪しが自分で判断できない。マスコミの宣伝だけで指導者を選んでしまう。ところが、私がSNSで発信するだけで集まってくれる生徒の方は駅前ビルやタレントを使った宣伝には見向きもしない。自分の目で判断する。


 「東大、京大、阪大、名大、東北大、九大、北大」など旧帝に合格できるのは少数派。多くの生徒が知名度だけで予備校や塾を選択しているときに、私のような無名の人間を探して見つけて信用する。


 少数派になるのが怖い、失敗するのは嫌だ。そういう人は「その他大勢」の生きる道をいく。そういう人は旧帝に合格しようなどという夢は捨てた方がいい。どうせ叶わない。
作品名:ソロモンの「教室」 作家名:高木繁美