空色チャリ。
だから、あの日臨海学校に宿泊していて
留守番メッセージを聞けなかったなんて言っても無駄かもしれない。
臨海学校に行っていたことは事実だけど、
そんな言い訳が通用するような男ではないというのは百も承知だ。
だが、元はといえば中学校を卒業して
あたかも祐樹のことを忘れたかのように、
急に青森へ姿を消す信也の方が悪いのではないか?
リビングで一人、受話器を片手に、
祐樹はそんな怒りにも似た思いをくつくつと湧き上がらせていた。
別に、信也に会いたくないわけではないのだ。
どちらかというと、恥ずかしい。
おかしく聞こえるかもしれないが、これ以外の思いはない。
何せ、中学校を卒業して以来、2年ぶりの再会となるのだから。
「・・・信也ぁ」
祐樹は半ば乱暴に受話器を置き、大きな溜息をついた。
―自分が女に興味がないことを知ったのは、
意外にも小学生のときだった。
「ねぇ祐樹くんは好きな子いないの?」
「え・・いないよ」
「なんだぁつまんなーい」
クラスでは毎日の日課のように好きな人の話ばかりで、
くだらないことで騒ぎ立てる。
祐樹もそのグループの中に入ってはいたが、
どうしても盛り上がれず、いつも輪の中から外れていた。
そのせいか、友人と呼べるような存在がなかなかできなかった。
どうしてこんなに恋愛というものが苦手なのか。
いや、どちらかといえば「女」が苦手なのだ。
まだ幼かった祐樹にも、そんな思いがあった。