小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

空色チャリ。

INDEX|1ページ/1ページ|

 
―信也が東京に来ることは前もって連絡されていたことだった。

だから、あの日臨海学校に宿泊していて
留守番メッセージを聞けなかったなんて言っても無駄かもしれない。
臨海学校に行っていたことは事実だけど、
そんな言い訳が通用するような男ではないというのは百も承知だ。

だが、元はといえば中学校を卒業して
あたかも祐樹のことを忘れたかのように、
急に青森へ姿を消す信也の方が悪いのではないか?
リビングで一人、受話器を片手に、
祐樹はそんな怒りにも似た思いをくつくつと湧き上がらせていた。


別に、信也に会いたくないわけではないのだ。
どちらかというと、恥ずかしい。
おかしく聞こえるかもしれないが、これ以外の思いはない。
何せ、中学校を卒業して以来、2年ぶりの再会となるのだから。

「・・・信也ぁ」

祐樹は半ば乱暴に受話器を置き、大きな溜息をついた。





―自分が女に興味がないことを知ったのは、
 意外にも小学生のときだった。

「ねぇ祐樹くんは好きな子いないの?」
「え・・いないよ」
「なんだぁつまんなーい」

クラスでは毎日の日課のように好きな人の話ばかりで、
くだらないことで騒ぎ立てる。
祐樹もそのグループの中に入ってはいたが、
どうしても盛り上がれず、いつも輪の中から外れていた。
そのせいか、友人と呼べるような存在がなかなかできなかった。

どうしてこんなに恋愛というものが苦手なのか。
いや、どちらかといえば「女」が苦手なのだ。
まだ幼かった祐樹にも、そんな思いがあった。

作品名:空色チャリ。 作家名:夢見屋