〆の雑炊(おしゃべりさんのひとり言 その53)
〆の雑炊
お腹いっぱいになっても、無理してでも食べる〆の料理ってありますよね。
甘いものは別腹って、デザートともまた違う感じで。
もう一品と言うより、更に一食分追加くらいのもの。
なぜか〆がないと、終わりに出来ないって言うか・・・。
(閉めてお開きって、変な日本語)
宴会やって、帰り道でラーメン屋に寄るとか。
すき焼きでお肉いっぱい食べた後、その鍋で焼うどんに卵まぜたり。
焼肉の後の韓国冷麺も魅力的。
でも鍋料理の〆は、やっぱり雑炊でしょ。
僕はいつも、お腹キンキンでも無理やり食べる派です。
でも不味いと嫌ですよね。
もう一品追加で注文するならいいけど、雑炊とかは自分たちで作らないといけない。
「鍋の最後は出汁が出てるから、誰が作っても美味いんじゃ」って豪語する人って嫌い。
〆も繊細に作ってほしいもの。
野外BBQで肉を焼くのって、一種の遊び感覚でしょ。
〆に雑炊作るのも、これに近い感覚なのかって、思ったことがある。
以前、キャンプ場でBBQをした時に、やたらと張り切る男がいた。
準備段階で、闇雲に目に付いたものを手に取って、それからやり始めようとするんです。
薪に火を着けて焚火をしようと、その人が手に持ったバーナー。
それがないと、BBQコンロの炭に火が起こせないんだ。
でもそのことに気付いてくれない。だからその人待ちになっちゃう。
その人、やたらと薪を組み上げて、大きな炎を上げようとしてる。
それが今の目標になっちゃってるんじゃない? みんな見とけよって思ってるみたい。
結果、その人が一段落して気が済んだら、他の人が作業開始するみたいに。
レクリエーションだから、楽しめればいいんだけど。
そういう人に限って、やたらと肉焼き当番やりたがる。笑
その人が料理人とかだったら、逆にありがたいけど、そんなこと普段しそうにない人が、こんな時だけトング握っちゃう。
人の好みの焼き加減なんかお構いなし、火力にはこだわって、うちわで無茶苦茶扇ぐから、灰まみれで焼き過ぎになった。
誰かが、こだわりハンバーグを用意してくれても、人のタイミングを見計らわないから、カチンコチンになるまで鉄板の上。
もったいな~い。
焼きおにぎりや、じゃがバターも、誰の予約もなく網の上放置。
結果、黒焦げ。誰も食べなくなって、網の周囲に集まる。
当然、〆に何かをって雰囲気じゃなくなってる。
焼きそばがあったけど、それを見せると、周りの焦げ肉と混ぜちゃう気がする。
これはあくまでお遊びの範疇だから、まぁ、いいじゃない。
でもこんな人が〆の雑炊を作ろうとすると、僕は待ったをかけたい。
遊び感覚じゃ許せないんです!
オーソドックスな水炊きや、寄せ鍋、モツ鍋くらいだと諦めも付くけど、
鴨スキ、ふぐちり、クエ鍋、スッポンとかだったとしたら・・・
もぉったぁ~いな~い。
以前、親戚の集まりで、旅館で鍋を食べた後、当然のように雑炊のセットが出された。
それでうちの奥さんに、料理が得意なので任せたら、出来上がった雑炊が、あまり美味しくない。
皆、酔っぱらっちゃってて、あまり気にせずすすってるけど、僕がイメージしてたのは、こんなんじゃなかったはず。
こんなこと、つき詰めて考えたことなかったけど、納得いく答えが見つかりました。
高級なお店に行くと、いつも仲居さんが雑炊を作ってくれるんだけど、
傍で準備してる時から、仲間内の会話が出来なくて、シーンとしちゃいそうだったから、
なんとか場をつなごうと、その仲居さんに雑炊を作る時のコツを聞いて、やらせてもらった。
↓これがそう。
まず、鍋に残った具材のカスは、全部取り出す。
これが一番大事だそうだ。
自分でやると面倒だから、ついついご飯を先に入れちゃうよね。
焦らないで、雑味の元は丁寧に取り除く。
よし。覚えとこう。
次に入れるのが、刻んだ青ネギ。
え? 意外!
薬味って、最後に入れるもんだって気がしない?
でも青臭さが残らないよう、少し煮込んで匂いを飛ばすんだって。
でないと、せっかく出たお出汁の風味が、ネギの匂いで判らなくなるから。
なるほど。覚えとこう。
そして沸騰させる。
ご飯は沸騰してから。
ぐつぐつとなったら、すぐに投入。
このご飯は水洗いしても、しなくてもいいらしい。
サラサラの雑炊を好むなら水洗いして、とろんとしたおじやを好むなら洗わず。
但し、その量が重要。
4人前なら、お茶碗1杯分で十分らしい。
それじゃ、少なすぎやしない?
いやいや、お腹一杯ご飯を食べるのが目的じゃなくって、鍋のお出汁を楽しむのが目的。
そうか、これを理解してないと、〆の料理の質にかかわるわけか。
解った。覚えとこう。
ご飯を入れて軽くかき混ぜたら、火を止める。
そんなすぐに火を止めるの?
もう煮込みが必要なものは、何もないから。
火を止めるとすぐ、溶き卵を回し入れて蓋をする。
卵は、鍋の中で混ぜる必要がないよう、均等に入れるのがコツだって。
そして少し待つ。
蓋を開けると、表面に卵が半煮え状態。
よしよし、これでいい。
混ぜたくなるけど我慢、そのままお玉ですくって取り皿に盛る。
そして、刻みのりをまぶして、お好みで塩と七味を。
はい、召し上がれ。美味しいですよ。
これからは僕が〆の雑炊係です。
つづく
作品名:〆の雑炊(おしゃべりさんのひとり言 その53) 作家名:亨利(ヘンリー)