俺ひとりだけ……
もちろん孝志が良い奴だってことは俺が良く知ってる、多分由佳よりも。
そして由佳はきっと良い嫁さんになるだろうってことも良く知ってる、多分孝志よりも。
そんな二人が結婚することには何の不安も不満もない……はずなんだが……。
相手が孝志じゃなくて知らない男だった方が気が楽だったような気がするんだ。
由佳は大変な時期を一緒に乗り越えて来た大切な妹だし、孝志は小学校時代からずっと親しくしてる大切な親友、その二人をいっぺんに盗られちまうような……俺だけがひとり取り残されるような……。
まあ、孝志はこの近くに新居を探しているから二人と会えなくなるようなことはないと思う、でも二人の新居にお邪魔して、二人が仲良く暮らしているのを見れば、やっぱり取り残されたような気がするんじゃないかって気もするんだ。
俺もかれこれ三十間近、今のところ影も形もないが、これから嫁さん探しに精を出すことにしよう、由佳と孝志に負けないような家庭を築くんだ。
でも、由佳のより美味い焼きネギの煮びたしを作れる嫁さんを見つけるのは簡単じゃないだろうな、って気はしてる。
まあ、俺の方も孝志が由佳に贈ったのよりでっかいダイヤを買ってやれるかって言うと、それも難しいんだけどね。