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端数報告3

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しかしテレビに映ったときに画面に耳を当ててみれば、骨伝導で心の叫びがはっきり聞こえる。試してみたまえ。それがコロナの〈禍〉の中で日本の首都の知事をやらねばならない者の姿だ。
 
池上彰なんかに会っても、
 
「知事はもちろん、〈波〉がなんにより引き起こされ、起こるとどうなるかおわかりですよね?」
 
と言われるだけだから、
 
「もももももちろんですとも」
 
と応えるしかない。助言を乞うため学者を集め、恐る恐る、
 
「えー、〈波〉がなんにより引き起こされ、起こるとどうなるという件ですが……」
 
と切り出してみればどういうわけか、学者の全員が眼をそらして黙ってしまう。10秒、20秒、30秒。1分半くらいしてからやっと、ひとりが、
 
「それについては知事はもちろん、おわかりになっておられますよね?」
 
と言うのでやっぱり、
 
「もももももちろんですとも」
 
と応えるしかない。相手はホッとした顔をして、
 
「そそそそうですか。感染者が減ったからと言って油断してはいけないのです。その証拠に、検査態勢を2倍に強化したところ、新たな感染者が前日の2倍になりました。実は減ったように見せて拡大させてたのですよ。コロナというのはそれほどまでに油断のならないウイルスなのです。緊急事態宣言を解除しなかったのは賢明でした。それをしなければ間違いなく、迅速かつ完全な壊滅を見ていたでしょう」
 
と言う。そうなのか。良かった。けれども、何か言うことがおかしな気もする。しかし、それがなんなのかわからない。学者達はみんなウンウンと頷いていて、この助言に従うだけが己にできる選択だから、これを続けるしかないのだけれど、誰もがみんなあたしが見ると眼をそらすのはなんでなのよお。
 
というのが東京都知事・小池百合子の毎日なのがテレビに映る顔を見て手に取るようにおれにはわかるが、えーとそれから……まあいいか。話はまだまだあるんだけども、今日のところはここまでにしましょう。ほんとは毎回これくらいの長さでやっていきたいねん。

作品名:端数報告3 作家名:島田信之