青い瞳の魅力(おしゃべりさんのひとり言 その49)
青い瞳の魅力
ある日の海外での会話。その時、ちょっと不本意な行動をとってしまったことが忘れられない。
イスラエル滞在中に、電話がかかって来て、
「オー! よかった。ヘンリーさん。トラブルが起こってるんです。どうしたらいいですか?」
(ニメル君だ。頼ってくれるのはいいけど・・・電話で英語の説明難しいから・・・)
「ああ、ちょっと今、手が放せませんから、後でそっちに行きます。少し待っててください」
その時、手が放せない用事なんてなかった。「すぐ行きます!」って気持ちになれなかっただけだ。
でも、僕は重い腰を上げるしかない。
(うーん。あの人、どこか苦手なんだよね)
そう思って、ゆっくり準備しながら、気分を切り換えていると、また電話が。
「ハロー? ヘンリーさん。ちょっと話せますか? 相談したいことがあります」
(アナちゃんか。この人にはなぜか親近感があるな)
「どうしたの? 直接話そうか」
どっちを優先すべきだったかは、トラブル解決の方だろう。でも僕は本能的に、それが出来なかったんだ。
最近の『おしゃべりさんのひとり言』、恐怖症シリーズみたいになってるけど、考えたら結構、恐怖を感じることってあるんだね。
自分は怖がらない性格だって思ってたけど、単にプラス思考がそうさせてるだけなんだな。それが分った。
だからお化けみたいな非論理的なものは、考え方次第だから怖くもなんともない。
夜の墓場なんか怖いはずがないし。・・・でも突然タヌキとか跳び出して来そうで、不安な気持ちはある。
でも、もっと明らかに危険なもの、チェーンソーとか、猛毒の蛇とかサメとか。これらは単純に怖いんだ。
なのに、危険なはずがないものでも、恐怖を感じることってあるんです。
対人恐怖症もその一つ。
僕もそうなのか判らないけど、人の目を見ながら話すのって苦手だな。
出来ないわけじゃないけど、意識的にやらないと、違う方向を見ながら話してる。
今まで多くの人と出会う人生を送って来て、大勢の前なら平気なのに、1対1だと照れくさいというのが本音だ。
特に女性相手だと、目が見られないよね。
面談みたいに対面で二人きりの時は、がんばって相手の目と目の間を狙って見る。
それは怖いというより、恥かしかったり、自信がないってのも理由だったりするんだけど。
でも、そんな事情だけじゃないこともあるんだ。
僕は年中、海外出張をしてたし、プライベートでも旅行は好き。
でも、アジアに好んで行くことが多くて、欧米はちょっと気が引けてた。
その理由は、白人がコワイ。
いいや。そうじゃない。その人種が怖いんじゃなくって、目だ。
青い瞳が苦手なんだ。瞳が黒や茶色の人なら大丈夫なのに。
白人の顔立ちって、カッコイイなって思うんですよ。羨ましいくらい。
そこにコンプレックスでもあるのかな?
日本人でも体格がそこそこ良ければ見劣りなんかしない。
肌の色だって日本人の方が白いってこともよくあるし、日本人の頭髪のカラーリング、茶髪や金髪も当たり前でしょ。
瞳の色もカラーのコンタクトレンズで変えられるけど、意外に青のカラコン着けてる日本人は少ないよな。
そんなカラコン入れた目を見ても、人工的だからか、本物じゃないからか、違和感あっても怖くはない。
でも、僕は白人の目が、なぜか怖い。青い瞳がコワイんです。
思い起こせば、若い頃から、(こいつカッコイイな)とか(キレイな女優だな)って思う白人は、決まって瞳が茶色だった。
仕事仲間でも安心して雑談とか出来るのは、瞳の黒っぽいアジア系や黒人の方。
アラブ人も黒い眼の人多いけど、たまに青い瞳の人もいて、やっぱり避けてた気がする。
冒頭のニメルは、アラブ系の白人っぽい男性。すごく勤勉で努力家。夢もあって仕事に熱中するとてもいいヤツ。
一方のアナは、ユダヤ系の西アジア女性。スッとした顔立ちで声が細い。いつもチョコレートくれる優しい娘。
あの時、別に可愛い女の子だから優先した訳じゃない。
つまり、ニメルは青い瞳。アナは黒い瞳だったってだけ。
青い瞳を見ると、そこからビームでも出るんじゃないかって思っちゃう。
これ差別意識とかじゃないですよ。
映画とかで、眼からエイリアンの触手が、ピロピロピロピロって出てきそうな感じの怖さを感じるんです。
なんでかは解らない。
白人女性は魅力的だって思いますけど、青い瞳や、特に緑の瞳なんて、すごく綺麗だと思うのに、いざ付き合うかって考えると、茶色い瞳の人を選択しちゃう。
実際は白人と付き合ったことないから、食わず嫌い(比喩ですよ)かも知れないけど、やっぱり黒っぽい瞳の人とは、安心感が違う気がして。
色々考えて、長年その気持ちを克服しようとして来たけど、ずっと無理だった。
それがなんと、ここ半年で大きな変化がありました。
偶然、あるノルウェー人の女性ボーカリストに興味を持ったんです。You tubeでのこと。
どうやら彼女は、アマチュア歌手のユーチューバー。でもその技量はすごいんです。
初めて聞いた彼女の歌が、昔好きだった映画の挿入歌で、何度もオリジナル曲を聞いて来たのに、この女性の美声に震え上がっちゃった。
ハードロックのカバーだったから、その動画じゃ、革ジャケに派手目の黒い化粧をしていて、瞳は黒いように見えた。
他にアップされてる彼女のカバー曲は、ポップスだったり、オペラだったり、その変幻自在の声質の幅がハンパない。
曲に合わせて声だけじゃなく、衣装や化粧を変えて、髪型も変えたり。スタジオ照明を演出したり、外でロケしたりと、どうやらバレエでもやってたっぽくて、スレンダーな体型とダンスも素敵だし・・・。
はい、・・・正直に言いますけど、声だけじゃなく、この女性の顔が超好み。どストライクの100点以上!
ジャー!(ja:英語発音のノルウェー語のyes)
ついに巡り会ったって気がして、すぐに全200曲以上ダウンロードして、毎日聞いています。
家でも、車でも、歩いていても、全然知らなかった北欧のシンフォニックメタルに、ロックバラードやミリタリーバンド、彼女のカバー曲すべて覚えちゃうくらいに。それくらい好きになったんです。
でも困ったことがひとつ。
明るいライトに照らされた彼女の瞳が、・・・コワかったんです。
そうです。青だったんです。
暗いところで映ると、瞳孔が開いて、黒眼がちになるんだけど、明るい場所だと逆に縮んで、青眼が目立つ。
綺麗な青なんです。とても。でもやっぱり、コワイんだ。
それでもプリティな彼女の映像を見たいって思っちゃって・・・。
そうこうしてる内に、結果、慣れて来ました。今は、青い瞳、何とも思わなくなりました。
初めて恐怖症を克服できたかも。
論理的に考えるんじゃなくって、本能で好きになっちゃえば・・・
てへwww
つづく
作品名:青い瞳の魅力(おしゃべりさんのひとり言 その49) 作家名:亨利(ヘンリー)