第三話 くらしの中で
その二
職業に就いていた人は定年後はっきり二つに分かれることは確かだ。つまり退屈な日々を送っている者と何かを楽しんで没頭している人だ。
たまに人と話すことがあるが、或る人に、「何をしてたの?」と聞くと、「ぼーっとしてテレビを観てた」と言った。
亦ひょっこり訪ねてきて、自分勝手に金持ちとか持ち上げた挙句に、自分の家庭の金のことばかり口角泡を飛ばして話して帰って行った。帰り際に、「独り暮らしでつまらんやろ」との置き土産の言葉まで残して。そういう人には返答のしようもなく相槌だけは打ったものの、多分先方ももう来宅はしないだろう。
私の住んでいる地区は住宅街なので、朝夕の運動をしている人は多いようだ。早朝に家を出て公園まで行くと、年寄りがゆっくりと歩いている姿を見かける。夕方は中高年の女性が主に二人組でウォーキングをしている。家でどんな暮らしをしているかは知らないが運動にはかなり熱心な人が多いように思う。
そういう意味では私は落伍者だなと思う。
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子