第三話 くらしの中で
小さな営み その一
今の時代の情勢はどんな広い付き合いの中に居ようとも、実際の生活は狭い範囲で個々が小さい営みを続けている。自分を取り巻く世界が大きければ大きいほど電波を通じて事を為しているのではないだろうか。
案外小さな町で、村で生活している者は対面して今まで通りの暮らしが可能である。
昨日小さな町のわが街の市長が直々に災害ラジオを通して自粛を呼びかけた。県知事からの指令があったのだそうである。たしかにテレビのニュースで知事が言った言葉と同じ内容であった。
私は今の世情に変わる前から今と同じ暮らしをしていた。だから人が訪ねて来なくても何ら変わりはないのであるが、国中が、ましてや世界中が自宅での自粛を呼びかけていると、これまでの生活が変わって閉じ込められたような気になるからおかしなものだ。
作品名:第三話 くらしの中で 作家名:笹峰霧子