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Journeyman part-3

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 このゲームでも、ジャズのディフェンスはサンダースの誇る3人のランナーを止めることに躍起にならざるを得ず、時折混ぜるリックのパスはことごとく通る、そしてパスに気を取られればケンとクリスがディフェンスを切り裂く。
 前半を終えてサンダースは28対3と大きくリードを奪い、スタジアムを埋めたファンも躍動するサンダースに酔いしれた……が、後半開始早々、そのスタンドが凍り付いた。
 左サイドから漏れて来たディフェンスタックルから逃げながらサイドラインへパスを投げ出したリックだったが、何もかも上手く行かない試合に苛立っていたディフェンスエンドは、リックが完全にボールを手放しているのも関わらず過剰な力でリックに背後から襲い掛かって来た。
 レイトタックルに加えてラフィング・ザ・パッサー、かなり悪質な反則だった。
 パスを投げ捨てた時点で気を抜いていたからたまらない、ディフェンスタックルにのしかかられたままフィールドに叩きつけられたリックは、右肩が不気味な音を立てるのをはっきりと聞いた。
(くそっ……この大事な時期に)
 激しい痛みの中でリックは思った、右肩の負傷が軽いものでないことはわかる、少なくとも今シーズンはもうパスを投げる事は出来ないことを覚悟しなくてはならないだろう。
 いや、今シーズンに限った話ではない可能性も大きい、満足にボールを投げられるようになるまでに2年、3年とかかるようならば選手生命にも終わりを告げなくてはならないかもしれない。

 そのシーンを間近で見たティムはカッとなって相手に掴みかかろうとしたが、ビルに止められた。
「リックがゲームに戻れなければお前が代わりを務めずに誰がいると言うんだ!」
 ティムは一瞬立ち止まると、ビルの目を見て頷き、横たわったままのリックの脇に膝をついた。
「大丈夫ですか?」
「大丈夫……じゃないみたいだ、だいぶ拙そうだよ」
「そんな……」
「後は任せる、日本に灯ったフットボールの灯を消さないでくれよ」
「僕には荷が重すぎますよ」
「君を置いて他にはいないんだ、まだプレーオフに進める望みはある、日本のファンにプレーオフの緊張感を味わって貰いたい、それには君の力が必要なんだ……自分を信じるんだ、わかったな?」
「……はい……」

 リックが担架で運び出されて医務室に向かう、ティムとしてはリックの状態も気にかかるが、ゲームは待ってくれない。
 リックに悪質タックルを仕掛けた選手は厳重な警告を受けた上で退場、更に15ヤードの罰退、自陣40ヤード地点からのオートマチック・ファーストダウン。
 ティムはヘルメットをかぶるとフィールドへと走り出した。

作品名:Journeyman part-3 作家名:ST