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されてしまった?

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(─ 最悪だ)

 いつもは、鞄に折りたたみの傘が入っているのに。

 たまたま忘れた放課後に、大雨に見舞われるとは。

(── どうやって帰ろう)

 私は一人っ子だし、両親は共稼ぎ。

 家に電話したところで、傘を持って迎えに来てくれる人などいる筈もない。

 校舎の玄関の軒下で、私は立ち尽くす。

 ふと背後に、人の気配。

「北さん?」

「えーとぉ」

「悲しいなぁ。クラスメートなのに、名前を覚えてくれてないんだ」

「…ごめんなさい」

「大吾だよ。里見大吾」

 傘が、私の目の前に差し出される。

「貸してあげる」

「え?!」

「僕は別に、折りたたみの傘も持ってるから」

「でも、男の人から傘は……」

「はい。え・ん・りょ、し・な・い」

 強引に傘は、私の手に握らされた。

「こ、これって──」

「そのうち返してくれれば、い・い・か・ら。」

 鞄から取り出した、折りたたみの傘を広げる里見君。

「じゃあねぇ。また、あーしーたー」

作品名:されてしまった? 作家名:紀之介