ツキノワグマ
私は黒いスーツ姿の三人組の男に追われて、逃げている。
後ろを何度も振り返りながら、どこまでも続く暗い道を、走って逃げている。
男達は、殺し屋のようだ。
手に日本刀を下げている。
私は必死に逃げているが、上手く走ることが出来ない。
それもそのはずで、どうやら私は、沼の上を走っている。
沼は漆黒の闇におおわれている。
男達がどんどん近づいてくる。
沼の上にも関わらず、猛烈な速さで私に近づいてくる。
私はこれ以上逃げても無駄だと思い、死んだふりをしていた。
男達は私の体を踏みつけて、そのまま走り抜けていく。
するとその先に、違う殺し屋が三人いて、果し合いが始まった。
私は恐る恐るその場から逃げ出したが、それに気が付いた六人の殺し屋が、果し合いを中断して、追いかけてきた。
私は、必死になって逃げた。
六人が間近に迫ってきたとき、目の前に大きなツキノワグマが現れたので、私はツキノワグマの後ろに隠れた。
六人の殺し屋は、ツキノワグマに、
「親分、そいつは、兄貴を殺した奴なんです」
と言った。
「バカヤロー、堅気に手を出すんじゃないと、言っているだろうが」
とツキノワグマが言うと、
「わかりました、親分」
と言って、殺し屋達が帰って行った。