音の世界(おしゃべりさんのひとり言 その38)
その38 音の世界
自然の音って、癒されるもんですよね。
でも、それが聞こえない環境で生活してると、癒される音って、やっぱ音楽だよね。
「おい、お前も何か歌えよ」
「はい、じゃ、ガッチャマンを」
「なんだそれ? お前そんなの歌うのか?」
「これぐらいしか自信ないんで」
僕は、こんな会話をしょっちゅうしていました。
別にガッチャマンが好きなわけじゃない。
キャシャーンでもトリトンでもよかった。
誰も歌わないような曲であれば。。。
その理由は、20代の頃、交流のあった方々が、プロレベルの歌手だったり、そのプロデューサーだったりしたから。
つまり、歌のスキルが高すぎて、僕なんかが一緒にカラオケで歌える空気じゃないんです。
へたくそな歌の照れ隠しで、大声でシャウトしてました。
でも最近じゃアニメソングも、いい大人が歌いますよね。
プロのトップアーティストが、アニメの主題歌を歌う。
これは当時僕の関連していた事務所の会長の方針で、90年代にそういうプロデュースを推進して来たから、『名探偵コ〇ン』なんかその代表例。
以降、アニソンがオリコンチャートを席巻するなんて当たり前になってしまった。
>皆さんはどんな音楽を聴きますか?
僕は若い頃、穏やかなポップス以外はほとんど聞かなかったんですが、最近はいろんなジャンルを聞くようになってきました。
僕自身、楽器はピアノと縦笛(小学校の)くらいですけど、少しでも楽器に親しんだことがある人なら解ると思いますが、音楽で会話できるでしょ。
よくセッションなんてのをする音楽家がいますが、まさにその感覚が解るかどうかの違いは、人生に幅を与えます。
楽譜を見ただけでその世界観が見えたり、異常な速度で指を動かして楽器を弾く、というような「訓練によるもの」とはまた違う感覚。
愛し合う二人なら、言葉でコミュニケーションをとるように、アイコンタクトでコミュニケーションを取ることもできる。
それと同じように、音楽でコミュニケーションをとることもできるんです。
音楽の聴き方で「この人解ってるな」って思うこともあります。
例えば、ピアノはなぜ両手で弾くのか。
エレキギターとベースギターで曲を表現するように、鍵盤楽器は左手でベース、右手でメロディを弾くことも出来るから。
一人でセッションが可能なこともある。
そんなことを知ってくると、曲の聴き取り方も違ってくると思うんです。
大人になってから、ロックやメタルをよく聴くようになりました。
昔はうるさいだけだと思っていたのに。
仕事で頭がグッチャグチャに混乱した時なんか、ハードロックをガンガン聴いて、脳みそをかき混ぜるとスッキリします。
3~5人くらいのバンドでは、それぞれの楽器をバッチリ合わせられるかがポイントなんだろうけど、それが絶妙で更に歌声までいいと、ヒットするに決まってるよね。
最近、そんな感覚が解って来た気がする。
大声でがなり立てるだけだと思っていたヘビーメタルも、ギターのテクニックを楽しんで聴いているし、暗い歌声のジャズやボサノバでは、明るい伴奏だけを聴き取っていることもある。
妻はあまり音楽には興味を持っていなくて、曲を聴いてもその歌手の歌声しか聴いていない様子。
それじゃもったいないと思うんだ。
楽器に興味がない人は、かつての僕もそうだったように、ポップスか演歌くらいしか、聴く気になれないのかもしれない。
歌声を聴くならオペラがケタ違いに凄そうだけど、心に余裕がないとしんどいね。
クラシックのオーケストラなんか、どの音を聴いていいのか迷うくらいにハーモニーがすごいでしょ。
あの音の組み合わせを考えられる人って天才じゃないかって思う。
ああ、間違いなく歴史に残る天才音楽家なんだけど。
なぜ、この歳になって音楽の良さが解って来たんだろう。
僕は小学生のころ耳の病気にかかって、耳がすごく弱かったんだ。
水泳クラブに通ってたんだけど、何度も何度も中耳炎になって、病院のお世話になっていた。
そのうち面倒になって来て、多少耳垂れが出ても、放置してしまって、結果、聴力に異常を来してしまったようだ。
健康診断では、小さな音は聴き取れるので「異常なし」となるが、僕には明らかに聞こえていない音域がある。
高音が苦手で、ある一定の高さからの音がほとんど聞こえていない。
年を取るとモスキート音は聞こえなくなるのは当たり前だけど、若い時から聞こえなかった。
スーパーで買い物をしている時、お店にBGMが流れてるけど、混雑してザワザワしてると、それが全く聞こえない。
「あ、この曲・・・」とか言われても、僕には何も聞こえていないことがよくあるんだ。
『You tube』で、昔の音楽を久しぶりに聴いた時、
「あれ? こんな伴奏だったっけ?」て、思うことが増えた。
誰に聞いても、「昔のままだよ」と言われるのに、僕にはアレンジされた伴奏のように聞こえて、違和感があった。
(気のせいかな? いやそんなはずは・・・)と、ずーっと思っていた。
それで昔の古い映像のまんまの歌番組動画を見ても、やっぱり当時と伴奏が違うと感じた。
(こんな明るい曲だったっけ?)と驚いてしまう。
理由をよーく考えてたら、ある時ひらめいた。
最近、スピーカーやイヤホーンの性能が良くなって来ていて、昔聞こえなかった音が、僕でも聞こえるようになってるんだ。
スゴイ!
このおかげで、音楽が楽しくなって、いっぱい聴くようになった。
つづく
作品名:音の世界(おしゃべりさんのひとり言 その38) 作家名:亨利(ヘンリー)