お役目
「色々と、お世話になりました」
板間に正座し、私は頭を下げた。
「これより、旅立ちます」
顔を上げたとたん、おじいさんと目が合う。
「─ 鬼ヶ島に行くのか?」
「はい」
その横に座るおばあさんが、表情を曇らせた。
「じゃがな。先代の桃太郎の話では…鬼はお宝を差し出し、二度と悪さをしないと誓ったと言うぞ?」
おじいさんが、言葉を引き継ぐ。
「そして、その約定どおり 何の悪事も働いておらぬ」
沈黙に耐え切れなくなり、私は口を開いた。
「…仕方がありません。鬼退治は、天から遣わされた桃太郎の お役目ですから」