お役目
「また…鬼退治ですか?」
こんな僻地まで、わざわざ両名が訪ねて来た事実。
それこそが、凶事だった。
「こんな遠方まで、わざわざお訪ねいただいた おふた方には悪いのですが──」
犬氏から差し出された物の受け取りを、小生は拒否する。
「吉備団子ごときで命を懸けるのは 一度やれば充分な愚行です」
猿氏は苦笑した。
「雉殿。われらも気が進まないので、出来れば 無理強いしたくない」
「お解り頂けますか?」
犬氏の表情が歪む。
「ただ…桃太郎殿は、天から遣わされた存在」
「?」
「その頼みを断ると言う事は…天罰の覚悟が必要かと……」
小生は、天を敵に回す程には愚かではない。
「─ お供するしか、選択肢がないと言う事ですね」