半分の哲学(おしゃべりさんのひとり言 33)
半分の哲学
「おい、あれ見て」
「うわっ、目開いてる」
「あれは恥ずかしい。半目開けて寝てる」
電車に乗ってたら、そんな人がいて、クスクスと笑ったり。
「おい、昨日頼んどいた報告書はもう出来たか?」
「すみません。まだ半分しか書けてません」
「あとどれくらいかかる」
「半日はかかりそうです」
仕事でよくある何気ない会話だったり。
「~~~でしょ。それにね、やっぱりそうだと思うんだけど」
「・・・・・・」
「ねえ! 聞いてる!?」
「え? ゴメン、半分寝てた」
こんなどうでもいい話だったり・・・。
『半分』って言葉、あまり気にせずよく使うよね。
子供の頃「半分こしなさい」って言われて、ほんの少しの差で揉めたことない?
お饅頭なら半々に分け易いけど、ソフトクリームはどうやって分ける?
正確に同量に分けてこその『半分』
でも、きっちり正確な半分なんて、誰も意識してなかったりして。
英語の『half(ハーフ)』は、1/2(二分の一)のことでしょ。
人によっては、曖昧かもしれないけど、基本的には何かに対して、正確に半分のこと。
30分は1時間に対して、『half hour(ハーフ アワー)』
『half & half(ハーフ アンド ハーフ)』は半分ずつのセット内容。
異人種間のハイブリッド(混血児)は、『half(ハーフ)』て呼ばれる。これも正確。
でも日本語の『半』は、どうだろ? かなりいい加減じゃない?
『折半』って言われたら、普通は「正確に半分ずつにしよう」って意味に受け取るよね。
『半額』てことは、50%OFFってこと信じていいんだろうな。
『半月(はんげつ)』これは正確に満月の半分になるタイミングのお月様だね。
『半月(はんつき)』こう読んじゃうと15日間? いや14~16日くらい? もっと幅持たせてる?
『夜半ごろ』真夜中? 夜の半分て、およそ何時のことだろ? 「夜半に集合。遅れるな!」無理ムリむり。イメージでしゃべってるけど、暗い時間帯ってことしかわからない。
『半身浴』は左半身・右半身とかなら納得するけど、上半身・下半身じゃ正確性に欠ける。
『半身不随』これは寝たきりか両足が動かなければ、って基準のような気がする。僕の叔父は右手右足が動かなかったけど、立って歩いてたから、障害者の認定レベルが少し低くなった。
『半壊』か全壊かで災害復興助成金の支給額が変わるんだ。倒壊しかけの家を半壊と認定しないで!
フィフティフィフティでない半々は、世の中にあふれている。
『半裸』見えてる? 見えてない? 半裸写真は通常がっかりする半着写真。それじゃ薄着と同義語。
『生半可な』半分本気で半分曖昧? いや、全然自信も責任も持ってないってことだから、ちょっとも本気なはずない。
『半信半疑』に至っては、この段階で疑ってるってことだから、半分どころか殆ど信じてないよね。
『半死半生』生きてるのか、死んでるの判らないんじゃなくて、単にフラフラの状態? これじゃオーバートークじゃないか。
そもそも『半死に』も生きてるってことだ。『半殺し』もそんなにうまく半分だけ殺せない。限りなく死に近付けても半殺しと言える。半殺人罪ってない。
『富士山の五合目』を半分と信じるな! 距離や標高など全く関係ないぞ。あと少しと思って、気力で登ってる時に現れる9合目半(九合五勺地点)に絶望を感じた。
『半笑い』ってできますか? 薄ら笑いとか小笑いでいいのに、小バカにした時の笑い方?
格言「10円を笑うものは5円に半笑い」う~む、正確か・・・。何円で爆笑になるのか調べたい。
『半官半民』会社は民にしても、肝心の働いてる人の感覚が官のまま。
『半永久的』限度があるのかないのか、もう意味が解らなくなっている。
『半病人』もう病気じゃん。
『半ギレ』もうキレた。
『大半』ほとんど全部!
『半強制的』完全に強制。
『半魚人』=完全魚人。
『半熟・半天狗・半年・半期・半面・半減・半道(はんみち)』他にもいっぱいあるけど、『二分の一』と言う意味と、途中の『半ば(なかば)』っていう意味を持ってるから、どっちの意味で使ってるのか、考えないとよく判らない。
でも僕には一つだけ、正確に知りたいけど知ることが出来ない『半』がある。
それは『半生(はんせい)』って言葉。
今の僕は、一生のどれくらいまで生きてるの?
つづく
作品名:半分の哲学(おしゃべりさんのひとり言 33) 作家名:亨利(ヘンリー)