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続・くらしの中で

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その三


本題の養老先生の話に戻ると、先生はその番組の会話の中で「不安」ということについて話されていた。
番組そのものは、年老いた猫の「まる」に話しかけたり一緒に散歩する静かな老後の鎌倉生活だったので眩しいような気持ちで観ていたが、不安という得体の知れない感情を、人間が持つ「極自然なこと」と言われたときはびっくりした。

自分だけではなく、具体的には心配もない生活を送っていても、人は常に何らかの不安を持ち、それを自然ななりゆきとして捉え、目の前の日常を暮らしながら、いつか自然のままにこの世から消えてゆく、そういうのは人間として自然の有り方だと言われる。

考えてみれば、人間なんて、しかも自分なんて、又自分が知る限りの友人や知己はちっぽけな存在で、産まれて色々なことを経験しながら生き永らえて、あくせくしたのも泡のような過去の出来事になり、自然のままに死んでいく。

養老先生はそういう、なりゆきは極自然なことだと淡々と語られた。死を怖いものとは捉えず、一時期この世に生存している生き物であるという認識である。
なんだかほっとするような、でも少しさびしいような気もしないでもないが。

今度養老先生の著書「バカの壁」を読んでみたいと思った。

 完
作品名:続・くらしの中で 作家名:笹峰霧子