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桐生甘太郎
桐生甘太郎
novelistID. 68250
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僕の弟、ハルキを探して<第一部>

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僕はその後すぐに兵舎を出たけど、オズワルドさんは宮殿には向かわなかった。

「あの…オズワルドさん」

「なんでしょう」

オズワルドさんは僕を見ずにずんずん町外れの方へと進んで行く。

「あの、宮殿はこっちじゃないと思うんですけど…」

オズワルドさんは僕のその言葉に返事をせず、そのまま町外れの寒々しい道を歩いて行った。



そこは墓場だった。いくつもの墓石が立ち並び、ひっそりと寂しそうな影を落としている。

僕の前には、二つのお墓があった。僕はその前に膝をつき、ただ泣き伏していた。信じたくない。どうしてそんなことに。

「初めての、大きな闘いがあった時のことでした…」

もう一度涙を拭って見てみても、「瀧川小太郎」、そして「瀧川依里子」の文字は石に刻まれたまま変わりはせず、墓石は黙ったままだった。僕は思わず母の墓石に取りすがって必死に抱き着き、自分の涙を冷たい石に擦りつけて泣いた。

「母さん…母さん…」


もう、母さんにも父さんにも会えないのか。僕はそんなことを知るためにこんな世界に来たのか。どうしてこんなことになったんだ。元の世界に居たままなら、二人は死ななかったはずだ。どうして。どうして。どうして。僕はそうやって誰ともない誰かに向かい、決して尋ね飽きることのない問いをぶつけながら、母の名を呼んで泣き続けた。


僕が立ち上がってから、オズワルドさんは、「ハルキ様がお待ちです」とだけ言った。