7人目。
「…やはり、流れてきたのか」
川から帰ってきたおばあさん。
その手には、大きな桃が抱えられていた。
「お告げが、間違いであれば 良かったのだがな」
「おじいさん──」
「言っても、詮無い事だな。すまん。」
抱えていた桃を、おばあさんが まな板の上に置く。
ワシは包丁を手に取り、慎重に刃を入れた。
桃が切り分けられ、室内に響く産声。
中から生まれ出た男の赤子を、おばあさんが静かに抱き上げる。
「─ この子に、鬼退治に必要な術を教えなければな」
産湯を使わされる赤子にを見ながら、ワシは 老体に鞭を打つ覚悟を決めた。
「まだまだ天は…この年寄を楽にさせる気はないらしい……」