頑張れ、俺!
ああ、俺の朴念仁! なんとか言えよ!
「コロナのせいで今年はまだ練習出来てませんけど、テニスコートでご一緒出来るのを楽しみにしてます」
「あ、うん……」
おい、俺! ここで何か言わないと後悔することになるぞ!
「そうだ、高校でテニスやってたんでしょ? だったらミックスダブルス組まない?」
う~ん、微妙だが、まあ、俺にしてはまだ良くできた方か……。
ふと気づいたんだが、彼女にも少し山形のアクセントがある、そのおかげで話しやすいのかも……って言うか、彼女がオンラインで口数が少ない理由もそこかも……。
「本当ですか? でも部活でやってたわりにはへたっぴですよ、ずっと補欠だったし……」
「そんなの良いよ、インカレ目指すとかじゃなくて、楽しみでやってるんだから、好きな子とミックス組めるなら最高だよ」
あ……ポッと言っちゃった……ああ、でも良いぞ、上出来だ、俺!
彼女の白い頬にポッと赤みがさしたような……ひいき目かな。
「……先輩、さっきチキンやピザよりも納豆餅のほうが好きって言ってましたよね」
「あ、うん……言ったと思う」
「あたしもなんです、美味しいですよね、納豆餅」
そう言って輝くばかりの笑顔を見せてくれた、もちろん俺も……まあ、俺のは『輝くばかり』かどうかは知らないけど。
「お正月は山形に帰るんですか?」
「うん、25日まではバイトがあるから、それから帰ろうかと思ってる、雪おろしも手伝ってやらなくちゃいけないし」
「もう新幹線の切符も?」
「あ、まだだけど」
「あたしが予約しても良いですか?」
「え?」
「一緒に帰ってもらえませんか?」
「あ、もちろん良いよ、良いのかな? お願いしちゃっても」
「はい」
「じゃぁ……頼むね」
「はい! 取れたらメールしますね」
「うん、お願いするよ」
「……じゃぁ、また……」
「うん、またね……」
画面から彼女が消えると、俺は思わずガッツポーズした。
この先は粘りと腰の強さで……そう、納豆餅のようにね。