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亨利(ヘンリー)
亨利(ヘンリー)
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セクハラかヤキモチかの調査報告(おしゃべりさん・・その28)

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 そして3か月が経過した。課長とIさん、Oさんの3人の帰国前に、伝えないといけないことがあった。コロナ禍では、すんなり日本に入国させてもらえない。いろんな制約があるのだ。まず、到着した空港でPCR検査を受けて、新型コロナの陰性を確認する。(もし陽性なら、入国できず、隔離施設へ送られる)その後、公共交通機関は使えず、手配した車両で自宅に帰り、14日間の自宅待機が義務付けられている。入国管理局のガイドラインでは、待機中の外出は控えることになっているのだ。

 彼らにこの段取りを確認したところ、課長からある相談があった。
「Oさんのご両親が御高齢なので、Oさんが自宅で待機すると、家族に移しでもしたら大変だから、ホテル待機させてほしいと申し出がありました」
とのこと。
 実際にOさんに聞き取りすると、そんな相談はしていなかったようで、
「帰国後すぐにPCR検査を受けるので、陰性であれば自宅待機で問題ない筈なのに、ホテル待機するのは課長の希望なんだろ」
って分かっていたそうだ。
 課長は更に、
「同じくIさんも祖父母と同居なので、出来たらホテル待機にしてほしいそうです」

 この相談には僕も困ったけど、3か月の出張売上は、かなりの利益に貢献してくれている。3人を2週間、ビジネスホテルに泊めるくらいは、別に無理な話じゃない。と思っていたけど、そこに課長のファインプレーが重なった。
「この件、カスタマーに相談したら、こんな状況でアメリカにまで来てくれて非常に感謝しているとかで、帰国後のホテル待機代まで面倒見てくれるそうです」
どこにもそんな契約はなかったが、課長の交渉術は素晴らしいと感心したものだ。
 それで、ホテル待機にどのくらい経費が掛かるかを計算するために、こちらで予約を入れようとしたら、
「もうこっちでネット予約を入れようとしていますから、金額が確定したら連絡します」と言う事だった。課長は日頃から、国内出張では会社に頼らず、自らホテル予約しているので、今回も任せても大丈夫だと思った。
 でも、帰国するギリギリまで、その金額の連絡がない。カスタマーから「いつ帰国してもいい」という許可がまだ下りないので、飛行機もホテルも予約できないというのが課長の言い分だ。

 結局、現地出発の当日に日本でのホテル待機の予約の詳細が送られてきた。それを見た時、私は課長の策略を感じずにはいられなかった。3人同じホテルで予約されていたのだ。
 どのホテルに予約しないといけないという決まりはなかった。課長とOさんは割と近くに住んでいたので、同じホテルと言うのは頷ける。しかしIさんは、自宅をかなり通り越し、1時間も離れた町のホテルに泊まる意図は、どう見ても怪しいと思える。
 でも彼らは既に、アメリカのホテルをチェックアウトしてしまっていた。メールしても見るはずがない。LINEしたけど既読にならない。わざと無視しているな。
 帰国日、昼過ぎに羽田に着いて、PCR検査。通常2時間ぐらいかかるらしいが、課長から連絡があったのは、18時ころ、
「全員陰性で、今ホテルに向かっています」
もうホテルのことで議論するには遅すぎるタイミングだ。うまくやるなと思っていた。


 訴えを起こしたN主任の話だと、このホテル待機中に、二人がオープンカーでドライブしているところを、こともあろうことか、取引先の社員に目撃されていると聞かされた。別に二人で車に乗っていることは問題なさそう。でも、他の社員の気持ちと言うか、印象は、
『平日に会社を休んで、課長職が新人女性社員と会わなければならないような用事など、あるはずがない!』
 そう思われても仕方ないよな。これが事実だとしたら、大変なことなのだ。ホテルで隔離待機しているはずの人が抜け出して遊んでいる。しかもカスタマーにホテル代、当社に日当まで保障させながら・・・

 こんな訴えがあったのも、この日は課長が休業中だったからだ。
 ホテル待機の2週間を終え、やっと現場に復帰してからは、前にも増して課長とIさんが、いつも一緒に行動していて、イチャイチャしているように見えたらしい。そして、出張中の代休等の処理もあるが、コロナ禍の業務薄で、国からの補助金を申請してみんな交代で計画休業を取っていたのだが、よく調べると、課長はIさんまで日を合わせて、同じ日程で休ませている。
 ますます怪しいじゃないか。

 まあ、そなもんだろうとは思っていたが、課長の部下たちと僕との温度差は、かなりなものだったようだ。
 誰もその現場を押さえたわけでもないのに、何の証拠も無く、現場の雰囲気だけで、二人は不倫関係だと決め付けている。僕には単純に、皆の『ヤキモチ』と思えたのだが、そう主張するのは、N主任だけではなかったから放っておけない。


 当社には、『ハラスメント規定』と言うのがあって、以前、セクハラ被害が報告され、その時に策定されたものだが、その後数回この規定が持ち出される事案が発生していた。
 セクハラF氏のせいで女子社員が退職し、F氏は課長から係長に降格になり、その2年後、また別の可愛い部下(この子は僕のお気に入りだった)の体を触って、F氏は逃げるように自主退職となった。また別の女子社員がパートさんにパワハラ発言で問題となり、その女子社員が(この子もお気に入りだったのに)退職する羽目になってしまった。この規定を持ち出すと、もう丸く収まることなどあり得ない。
 
 その規定通り、課長とIさんの計画休業中に、ハラスメント調査として、約10人から聞き取りをしたのだが、見事に全員の意見が一致している。あくまで想像の範疇ではあるが、不倫関係以外ありえない証言が次から次へと出てくるじゃないか。
(もうちょっとうまくやればいいの)と思うくらい露骨に行動していたようだ。課長自身、心の中で(こんな若い子といい関係なんだよ~)と周囲にアピールしたかったんだろうな。(←僕の馬鹿な想像)

 休業が明け、二人が出勤してきた。僕は課長と面談。Iさんは総務部の女性課長と面談。別々に同じ質問で聞き取りが行われた。
 課長の顔はさすがに青ざめていた。僕は事実関係だけを聞き出すことに専念し、想像や噂は話題にしなかった。

 こんな時いつも思うけど、「絶対に不倫じゃない」って言い張れば、事実は隠れて出てこないもんだ。逆に不倫じゃないの?とか聞いてしまうと、それこそハラスメントだって訴えられる。注意しないといけないことは、重々承知しているのだ。
 結果、『不倫関係ではない』『教育が行き過ぎた』という証言が取れるのだった。
 もっと詳細には、ホテル待機中に外出したか。そうなら何回くらい、どこに行ったか、目的は何か。その問いには、
「いやあ、ご飯を食べに行きましたけど。2~3回くらいだったと思うんですが・・・」と、始めはこんなふうにごまかしていたが、オープンカーが目撃されてると言うと、4~5回くらいかな~?」と、証言が変わった。