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悪魔言詞録

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139.魔人 ブラックライダー



 しかし、まあ、奇妙な時代になったもんだ。

 受胎前のこの地も一応は見てはいたけど、正直な話、すごい街になっていたよな。昼夜を分かたず性は乱れ、誰もが欲望のままに食い漁り、札束が乱れ飛ぶ異様な都市。それがトウキョウに抱いた最初のイメージだった。

 まず一番に驚いたのは食い物だった。なんかもうさ、他国からいろいろ輸入しているし、かなりの在庫をため込んでいたからさ。しかも、店は24時間営業だったり、夜だけの営業という形でいつだって食べ物にありつけるときてるんだ。こんなにちゃんと流通してるなら、簡単に食糧難にはならないだろうなって思ったよ。

 あとさ、さっき性の乱れなんて言っちゃったけど、これも最近はいろいろ取り沙汰されているよな。多様性っていうんだっけか。同性で愛し合うことや、自分の性に疑問を持つなんていうことも、取りあえずは可能になった。まだまだ過渡期でいろいろと摩擦が生まれているようだけど、まあ、おまえら人間のことだ、今の受胎状態から次の世界が創造されたのちに、この件も時間をかけて解決していくんだろうさ。

 でもさ。かつてだったら、こんな飽食や淫奔に塗れた街はあっという間につぶされていたんだぜ。ソドムとゴモラがいい例だ。あんなふうに神によって焼き尽くされちまう。もしくは、俺がききんを起こして皆を餓死させちまう。やりすぎた都市はそうなるのが定めだったのさ。
 でも、この都市は違った。受胎という形で大半は滅びたが、それでも新しい世界を創造してやり直すことが許されたんだ。

 俺は神の意向まではわからんが、この一件をもって神も神なりに思考をアップデートしてるんじゃないかと思っている。昔なら一瞬で業火に包んでいたぐらい乱れていた都市に、やり直しの機会を与える程度には、ね。

 そういう意味では、俺もききんというものの考え方をあらためなきゃ、あっという間に時代遅れになって誰からも見向きもされぬ存在になっちまうかもなぁ。


作品名:悪魔言詞録 作家名:六色塔