小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

カンガルー

INDEX|1ページ/1ページ|

 

 私は断崖絶壁に立っている。
 私は何者かに追われて、逃げているようだ。
 私を追いかけてくる連中の姿が、暗い広野の地平線の上に、小さな影になって見えている。
 ここまで来るのに、そんなに時間はかからないだろう。
 私の前方には、同じ高さの断崖絶壁があるのだが、私の立っている断崖から、目の前の断崖まで、肉眼で四メートル程の距離があり、その間は、奈落の底のような暗く深い谷がある。
 私は迫ってくる連中を気にしながらも、飛ぶべきか止そうか迷っている。
 私は幅跳びで、五メートル三十センチの記録を持っているが、この場合踏切りのタイミングが難しい。
 手前の方で踏み切ると、向かいの崖に届かず、奈落の底に落ちてしまうだろう。
 あまりギリギリ近くで飛ぶと、踏み切る段で足を滑らして、やっぱり奈落の底に落ちるかもしれない。
 試走も出来ないから一発勝負だ。
 しかしこのままここにいても、連中に捕まって殺されるのは、時間の問題である。
 その時である。
 カンガルーの群がやって来て、目の前の断崖を軽々と飛び越えていく。
 私は最後にやって来たカンガルーのメスのボスに、
「私を一緒に、向こうの断崖に連れていって欲しい」
 と相談した。
 カンガルーのボスは、
「その相談を受けるには、高い報酬が発生するが、それども大丈夫か?」
 と言った。
「報酬はいくらだ?」
 と聞くと、
「そうね、一生分の草とキノコと言いたいところだけれど、一年分にしてあげるよ」
 とカンガルーが、報酬をまけてくれたので、
「わかった。お安い御用だ」
 と私は言って、カンガルーの袋に入った。
 連中の姿が、肉眼ではっきりと見えるとこまで近づいていた。
 カンガルーのボスは、ちょっとそこら辺を走って、私の重さを確認した後、難なくそこを飛び超えた。
 私がカンガルーのボスに、事情を説明すると、
「それなら、私達が今から行くところまで、このまま乗っていきな」
 と言ってくれたので、私は、
「それなら、草とキノコは、二年分あげるよ」
 と言った。
 これで私は、連中に捕まらずにすむと思った。
 
 

作品名:カンガルー 作家名:忍冬