君は愛しのバニーちゃん
パンパンでパイパイ♡
嬉しそうな笑顔を見せる美兎ちゃんを見つめながら、俺は携帯越しに顔面を蕩《とろ》けさせた。
一学期末のテストの点が良かったご褒美として、今、俺は美兎ちゃんと動物園に来ているのだが……。
これは、紛れもなくデートと断言してもいいだろう。
ーー記念すべき、初デートだ!
触れ合いコーナーでモルモットと戯れている美兎ちゃんを眺めては、一人によによと鼻の下を伸ばす。
(モフモフとコラボとか……っ! 最強だなっ!)
ここぞとばかりに携帯で盗撮しまくっていると、突然振り返った美兎ちゃんに驚き、慌ててメールを打っているフリをする。
「ーー瑛斗先生は、どっちが可愛いと思う?」
「えっ……?! そりゃ勿論、うさぎちゃーー」
(……あっ。ヤベッ)
慌てていたせいか、思わず心の声で答えてしまった俺は、何事もなかったかのように微笑むと再度口を開いた。
「……右の子、かな?」
(こんなモフモフの毛玉より、美兎ちゃんの方が何億倍も可愛いよ……っ!)
そんなことを思いながら、美兎ちゃんの腕に抱かれたモフモフを指差す。
「……でも、やっぱりどっちも選べないくらいに可愛いねっ!」
「そうだね」
(俺は安定の、美兎ちゃん一択だけどね……♡)
「……! 美兎ちゃん。一緒に写真、撮ってあげようか?」
「うんっ!」
(ウオォォー!! ……俺ってば、ナイスアイデアだぜっ!!)
これで、可愛い美兎ちゃんの姿を堂々と撮影することができる。
そう思うと、心の中でガッツポーズを決めながら歓喜の雄叫びを上げる。
その後、鼻の下を伸ばしながら思う存分に美兎ちゃんの姿を連写しまくったのは……。言うまでもない。
※※※
本来の目的であったパンダの展示ブースへと移動してきた俺は、先程撮影したばかりの写真を携帯越しにスライドさせた。
(あぁ……! か、可愛い……っ! 可愛すぎだよ、美兎ちゃんっ!)
モフモフの姿など、ほとんどが見切れてしまっている写真達を眺めては、鼻の下を伸ばしてだらしなく微笑む。
『ーーそれでは、お待たせ致しました。パンパンの入場です!』
「瑛斗先生っ! 『パンパン』が出てくるって!」
「…………。うん、楽しみだね」
それにしても、パンダの赤ちゃんの名前が『パンパン』とは……。
パンダからとった『パン』だか何だかは知らないが、もはや安直を通り越して卑猥にしか聞こえない。
さっきから、美兎ちゃんが『パンパン』と言う度に俺の頭の中には『パンパン』の妄想が膨らむばかり。
勿論、それはパンダの『パンパン』という意味などではなくて、もっと大人の方。
(……グハァーッ!! 美兎ちゃんと、今すぐにでも”パンパン”してぇ〜ッッ!!!)
動物園も、なんだってこんなに卑猥な名前を名付けたのか……。
そのお陰で、俺の頭の中は美兎ちゃんとパンパンとセ○クスしている妄想でピンク一色だ。
流石に、中学生相手に本気で手を出そうなんてことは思ってないが。
もし、仮に……。万が一にでも……。
美兎ちゃんが誘ってくるなら、俺はいつだってパンパンOKだ。
(そこは、アレだ……。うん。男として? 女に恥をかかせるわけには、いかないし……な? ふふふ♡)
一人、そんな妄想を膨らませては、鼻の下を伸ばして怪しげに微笑む。
それにしてもーー
いつの時代もパンダの赤ちゃん人気とは不動のようで、その勢いは凄まじい。
周りを見渡せば、『パンパン』目当てで集まった人達で溢れかえっている。
まぁ、そのお陰で美兎ちゃんとも密着ができると思えば……。
この群集も息苦しさも、そう悪くはない。
「……美兎ちゃん。パンダ、見える?」
「うーん……。見えないよぉ〜」
「ここからの方が、見えるかもよ」
そんなことを言いながらさり気なく肩に手を回すと、自然と俺の方へと抱き寄せる。
「あっ……。ふぅ……っん」
ーーーー!?!!?!
(ファッ……ツ!?!!?!)
人混みに押されて思いの外密着する形になってしまった美兎ちゃんは、その苦しさからか、俺の胸にしがみつくとなんとも艶《なまめ》かしい声を上げた。
その不意打ちに、ビクリと肩を揺らした俺はその場でピタリと動きを止めた。
「……あっ! 『パンパン』見えたっ! 『パンパン』可愛い〜!」
パンパン、パンパン、と無邪気な笑顔を見せながらも、卑猥な言葉で容赦なく俺の耳を攻め立てる美兎ちゃん。
(ま……っ、まさか、これは……っ! 言葉攻めっ?!!)
ズキズキと痛む股間に、一人その場で悶絶する。
(俺……っ。ホントは、攻めたい派だけど……!! うさぎちゃんになら、攻められたっていい……っ!!!)
未知なる刺激にフラリとよろけると、危うく昇天しかけてなんとか堪える。
(……ゥグッ! あっ、危ねぇ。……俺にはまだ、やることあるんだ……っ!)
そうーー
先程からずっと気になっている、この謎の物体の正体を突き止めるという任務が……。
密着した身体から確かに感じる、このプニプニとした柔らかい感触。
これは、間違いなくーー
(美兎ちゃんの、おっぱい……っ♡)
そうは思うものの、ちゃんとこの目で確認してみないことには……。まだ、確証が得られない。
そう思ってチラリと下に目を向けてみればーー
ーーーー!!?!!?!!
(グオォォオーーッッ……?!!! ヤ、ヤベェ!!! し、死ぬ……っ!!! マジで俺、死ぬっ……!!! よっ、ようこそ、おっぱいっっ!!!!)
そこにあったのは、小ぶりながらもクッキリとした谷間で。
これはーー
間違いなく、お♡っ♡ぱ♡い♡だ。
尋常じゃないぐらいに血走った瞳をガン開きにさせると、穴が開くんじゃないかってぐらいに目の前の谷間を凝視する。
(パンパン人気……っ、マジすげぇ!!! ……っ『パンパン』! ”パイパイ”、ありがとう……っ!!!!)
心の中で、『パンパン』に向けてそんな感謝をする。
「……瑛斗先生っ! 『パンパン』、可愛ーー?!! ……キャーーッッ?!!! 瑛斗先生っ! は、鼻血が出てるよ……っ?!!」
俺の方を振り向くなり、慌てふためく美兎ちゃん。
何やら鞄の中身をゴソゴソとさせると、そこから取り出したティッシュを俺の鼻目掛けてズボッと突き刺す。
少しばかり雑な気もしなくはないが、これも天使からの愛ある介抱かと思えば、鼻の奥に感じた激痛など気にはならない。
何より、俺の可愛い天使ちゃんから愛ある介抱を受けながらも、視界には魅惑の”パイパイ”が広がっているなんて……。
確かに動物園に来たとばかり思っていたが、どうやら俺は、天国に迷い込んでしまったらしい。
ここはまさに、そうーー
””パイパイ♡パラダイス””
美兎ちゃんからの懸命な介抱を受けながらも、一向に止まる気配のない俺の鼻血。
作品名:君は愛しのバニーちゃん 作家名:邪神 白猫