嫉妬
私は人事異動で変わる前の、事務所に来ているようだ。
私は久しぶり顔を出した事務所で、後任の長になる後輩と、何やら仕事のことについて話している。
今日は作業の日なのだろう、作業着姿の女子職員たちが、休憩時間に事務所で休んでいる。
私は久しぶりに女子職員にあったのだ。
しかし女子職員の反応は、以前私に仕えていた時のようではない。
どこか余所余所しいのである。
私は五人いる女子職員たちを、色んな意味で守り育ててきた。
古くから此処にいる子たちは、私への配慮からか、あからさまに冷ややかな態度はとらない。
それでも何処となく、もう長でない私に、以前の様に気を使うことは無い。
それは人間としては、当たり前のことである。
私が勝手に彼女たちに、恩を売っているのであるが、やっぱりどこか遣り切れない思いがある。
この子たちは私への恩を忘れてしまったのか、と思うと一抹の寂しさがあった。
後輩の長になる男が、何やら女子職員達と、仕事とは関係のない話をしている。
普段積極的に声を出さないある女子職員が、後輩の長の話によく笑い、相槌を打っている。
その姿を見て私は寂しかった。
今日私がここに顔を出してから、彼女はまだ私に一言も挨拶をしていないのである。
どうやら私は、嫉妬しているらしい。
そうだ私は、その女子職員に好意を持っていたのだ。
私の時にはあまり見せない顔を、後輩の長の前で見せていることに。
女の子の私に対する嫌がらせかとも思ったが、そんな事をすらタイプにも思えない。
私は真意を確かめたくて、女の子と別室で話をした。
女子職員は、私に会えて嬉しいと言った。
しかし、今は、後輩の長の方が好きだと言った。
私は寂しくて、彼女を殺してしまいたいと思った。
私は持っていたナイフで、彼女を刺した。
彼女はフニャフニャと倒れ、死んでしまった。
私は、やってしまったと思った。これで、自分の人生は終わったと思った。
私は自分の頸動脈を切った。
大量の血がブワッと部屋中に飛び散った。
私は彼女の死体の上に、重なる様に倒れて、死んだ。