小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

マドンナ

INDEX|1ページ/1ページ|

 

 私は透明人間になっている。
 
 どうやら私は、片思いの女の子の部屋にいる。
 女の子は私の存在に、気が付いていない。
 女の子が私の目の前で、セーラー服を脱いでいる。
 私はドキッとしたが、それ以上にワクワクした。
 女の子はピンクのブラジャーとブルーのショーツ姿になった。
 下着の色が上下違うことから、あまり神経質な性格ではないのかもしれない。
 それは部屋の様子からもわかる。
 女の子の部屋はとても汚く、足の踏み場もない程だ。
 スナック菓子やコンビニ弁当の食べ残しが散乱している。
 服は畳まずそのままベッドや椅子の上に無造作に積まれている。
 ゴミ袋をいくつも重ね、山になっている。
 女の子は美人で物静かであり、知的な雰囲気が魅力で、男子のマドンナである。
 とても知的で美人な、女の子の部屋とは思えない。
 女の子はベッドに横になり、食べ残しのポテトチップスを食べながら、スマホをいじり始めた。
 どうやら出会い系サイトで知り合った男と、メールをしているらしい。
 今晩の待ち合わせ場所を決めている。
 
 女の子は売春をしていた。
 女の子の家は母子家庭で、中学生の弟と女の子の三人家族だった。
 母親は勤め先の妻子持ちの男との不倫に忙しく、このところ帰りが遅い。
 弟は不良仲間と毎晩深夜まで、遊びほうけている。
 女の子は一回当たり三万から五万で体を売っている。
 金持ちの気前のいい中年に当たった場合には、十万とかになった。
 多い時には月五十万以上の収入になる。
 女の子はその金を、全部貯金した。
 自分の大学進学の資金にしようと考えていた。
 高一から始めた売春で、今現在一千万近くになっている。
 女の子は優秀だった。
 学年でもトップクラスである。
 国立大医学部を志望しており、直近の模試でもA判定だった。
 医学部とは別に東大受験も視野に入れている。
 私の通う学校は県内でも一、二を争う進学校であり、トップクラスは東大か旧帝大医学部若しくは法学部を受験する。
 ほとんどが医者か弁護士を目指していた。
 それにしても、そんな優秀で美人の女の子が、売春している事実に驚く。
 それと同時に、大学進学のための資金を自分で稼いでいることに、頭が下がる。
 女の子の何となく陰のある感じや、変に冷めている理由が分かった気がした。
 女の子の部屋に毎日忍び込んでいる私は、彼女があまり勉強に時間を割いていないことが不思議に思えた。
 どうやら女の子は必死になって勉強しなくても、授業を聞くだけで、全て理解し暗記できる天才タイプのようである。
 相当IQが高いのだろう。
 通学する電車の中でも、参考書を退屈そうにながめているが、それで十分なのである。
 
 私はある日、夕方外出する女の子の後を付けた。
 女の子は男に会う日は、化粧をする。
 待ち合わせの場所に行くと、中年の男と落ち合った。
 頭の禿げたスケベそうな中年は、どう見ても変態親父にしか見えない。
 中年男は鼻の下を伸ばし、ニヤニヤして女の子と話している。
 女の子は中年男に、二十才と年齢を偽っていた。
 ラブホに入ると中年男は女の子に五万を渡し、いきなりキスをした。
 女の子は固まったように、されるままにしていた。
 女の子は感情の無い人形のように、ベッドに横たわりながら、行為の間、天井の一点を見続けていた。
 「又今度会ってくれる?」
 と中年の禿げ親父が言った。
 「ワタシ同じ人とは、もう会わないことにしているの」
 と女の子が無表情に言う。
 「どうして?」
 「勘違いされると嫌だし、面倒くさいこと苦手だから」
 「そうか、キミはオレのタイプだから、又会いたかったけれど、そういうことなら、無理には言わないよ」
 禿げ親父が未練を断ち切る様に言う。
 女の子は駅のホームで中年男と別れると、トイレに駆け込み嘔吐した。
 私は女の子がいじらしくて、仕方なかった。
作品名:マドンナ 作家名:忍冬