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新型ニヒリウイルス 第一章

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第一章

二○XX年八月七日。
「ニュースをお伝えします。昨今、猛威を振るっている新型ニヒリウイルスですが、都内の居酒屋でのクラスターが確認されました。居酒屋の店員は、『同窓会らしき飲み会を行っていた』と証言しています。」

「あーあ、このニヒリ渦でなんで同窓会なんかするかな」
ニュースを見ながらアキラはつぶやいた。
「仕方ないよ。STAY HOUSE期間も1年を超えているからね。早く『さくさく』に会いたいなー」アイドルに没頭しているタカシが、握手会の延期を嘆いている。

STAY HOUSE期間が1年を超え、東京都知事すらも「おうちであそぼ」という自らが掲げたスローガンを言い飽きた様子である。一時はロックダウンまでされたのだが、感染者は減少する様子を見せなかった。実をいうと、この新型ニヒリウイルスの感染経路は、専門家ですら分かっていない。1年間でありとあらゆる調査・検証がなされたのだが、感染経路は飛沫でも接触でもなかった。

「大変!お父さんが!ニヒリに感染したかもしれない!」
マイが二人に言った。三人は慌ててマイの父親の様子を見に行った。
「ああ…俺なんて、生産性もない!存在価値はない!死ぬしかないんだ!!」とマイの父親は喚いている。その様子を見た三人は「お父さんやめて!」「そうですよ!考え直してください!」「落ち着け!」と思い思いの言葉を叫んだ。が、その甲斐もなくマイの父親は自らの腹をナイフで刺した。マイの父親の体からは生々しい赤い液体がドバドバと流れていた。

人間の死の瞬間を目撃してしまったアキラとタカシは腰を抜かして震えていた。体を動かそうと脳が命令を送っても身体が拒否してしまう。そんな二人の隣ではマイが冷静に119番通報をしていた。