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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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電脳マーメイド

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37


 大使館でパスポートを渡し、受け取った番号札はガイドに渡した。
 彼と一緒に大使館を出て専属タクシーに乗る。
 ホテルに着いたときには10時を回っていた。
 ルームキーを貰って部屋に荷物を置き、早速朝食となった。
 彼は何があるのか分かっているために、焼き飯におかずを山盛りにしてテーブルに着いたが、私はとりあえず料理の種類を見てみた。
 あまり美味しくないと言っていた通り、彼は焼き飯にケチャップをかけている。私も彼に倣うことにして、焼き飯にオムレツなどを盛って席に着いた。
 遅れて来た彼の友人も同席して、結構賑やかな朝食となった。
 ここではどうも、二人っきりに慣れる機会はそう多くはななさそうだった。
「みずやんはどうする? シャワー浴びたら街を回ろうと思ってるんだけど」
「私はマッサージに行くつもりです。座席のピッチが合わなくて、腰が痛いんで」
「そうか。じゃあ、晩飯は一緒に行こうや。ここの飯はあんまり旨くないから」
「そうでもないですよ。前回ルームサービス取ったら、味も量も満足でした」
「ふうん、そうなんだ。でも、どうする?」
「行きますよ。中華屋がいいな」
「じゃ、決まりな。彼女も一緒だぜ」
 そんな会話をしながら遅い朝食を済ませた私たちは部屋へと一旦戻った。それぞれ隣同士の部屋だが、彼が私を手招きして部屋に招じ入れる。
「シャワーは後の方がいいですよ」
「どうしてですか?」
 私は訊く。
「マッサージは足らするんです。頭は最後」
「ああ、そういうことなんですね」
「すぐ隣がマッサージ屋なんですけど、なかなか上手ですよ。私は二時間してもらうつもりだけど、エレノアさんはどうします?」
「じゃあ、私も同じにします」
 サンダルに履き替えて二人でマッサージ屋へ行く。外観は普通の建物だが、内装は伝統的スタイルで落ち着いた雰囲気だった。まず足を塩もみし、水で綺麗に洗ってくれる。その後二階のマッサージ室へと案内された。
 マッサージ用のゆったりとした服に着替え、マットの上に横たわる。彼の言ったように、足からマッサージが始められた。
 あまりにも気持ちよくて、途中で眠ってしまったほどだ。タイ式マッサージは当然のことながら初めてだが、彼もマンション近くのマッサージ屋に通うのも理解できた。
「気持ち良すぎて、すっかり眠っちゃいまいました」
 階下でハーブティーを飲みながら私は言った。
「良かったでしょう? ここは上手なんですよ」
 そう言って、彼もお茶を啜る。
「どうします? ちょうどお昼ですが」
「私、もう食べられません」
 それを聞いて、彼は笑った。「そうですよね」
 マッサージ屋を出てホテルに戻る。「夕食に出るまで、少し寝ますか?」
「ええ、まだ眠いです」
「やっぱりバスの中では寝づらいですからね」
「健一朗さんは?」
「私はビールを少し飲みます」
「またですか?」
「こういう時でないと、旅行気分は味わえないですからね」
「じゃあ、私も少し頂きます」
 彼がボーイを呼びビールを注文とオムレツを注文した。
「フレンチフライもあるんですが、だいたい途上国の油物は、油がきつくて胸焼けするんですよ」
 ボーイが瓶ビールを二本持ってくる。お金を払う時、彼が氷を追加注文した。ビールがあまり冷えていないからだ。
 二人分のグラスに氷を落とし、ビールを満たす。
「エレノアさんの初ラオスに乾杯」
 グラスを合わせると、彼は一息に飲み干してしまった。
「ビア・ラオはホテルで飲んでも40バーツなんですよ。タイの一番安いビールよりも安いんです」
「だからって、飲み過ぎはいけませんよ」
「睡眠薬代わりですよ」
 オムレツが運ばれてきた。メニューで見たよりも大きかったが、中にあっさりとしたケチャップ味のひき肉が詰まっていて、なかなかに美味しかった。
「ラオスって暑いんですね」
 エアコンの効いているロビーは涼しいが、外は照りつける陽射しが肌を刺すような暑さだ。
「空気が乾燥してますからね。水分補給に気をつけないと。明日は昼から大使館です。水はコンビニで買って持って出るといいでしょう。でないと脱水症状を起こしますよ」
「はい」
 結局、二人でビール4本を開けてしまったのだった。
作品名:電脳マーメイド 作家名:泉絵師 遙夏