電脳マーメイド
59
力強く握られた手が、私を導く。
どこへ行くの――
――大丈夫。大丈夫だから。
大丈夫って、何が――
――私がついている。
あなたは、誰?
「ずるいよ……」
ずるいって、私が?
「あなたは、ずるい……」
だから、どうして、私が――?
私の手を引く感覚が強まる。
泥沼の思考の中から無理やりに引き上げられてゆく。
上へ、上へ。呼吸が出来るように。
下へ、下へ。大地に足が着くように。
双方向の力が私を引き裂こうとする。
ずるいという言葉が、真っ二つに私を切り離そうとする。
嫌よ!
私は、何も悪いことなんか、していない!
助けて!