電脳マーメイド
58
「健一朗さん……」
私は、うわ言のように彼を呼んだ。「健一朗さん……」
「私、怖い……」
「大丈夫、ここにいます」
「私……」
意識が遠のいてゆく。
唯一の頼りが、彼の温かい手。
遠く、遠く、沈んでゆく。
私は、どこへ行くんだろう。
エレノアが目覚めてゆく。
私の代わりに。
私は、どうなるんだろう――
このまま、消えてなくなるんだろうか?
そんなの嫌だ!
せっかく彼と二人で幸せになれるところだったのに――!
彼の手の感触が遠のいてゆく。
私の手を強く握る力が、綿あめを梳かすようにあやふやになってゆく。
お願い!
強く抱きしめて――!
私が、どこへも行かないように!